47.疑心暗鬼を生ず
『くらま』CIC
「ふーん」
安達は今届いた中国海軍からの通達を書き取ったメモをさも面白くなさそうに眺めていた。
「信じていいものでしょうか?」
飯島が横からメモを見ながら言った。
「まあ、信用しといていいんじゃないか」
あっけらかんと安達が言った。
「本気ですか?」
「さっき、船務長からあっちの僚艦は領海外に出て彼らの母港に向かう針路をとっているって報告有ったろ」
確認を兼ねて飯島に質問した。
「はい、航海長にもレーダーで確認させました。間違いありません」
「それならとりあえず気にする事はだろ。向こうにはこちらに手出しする力はないだうし、万一どっかの馬鹿が国のメンツがどうのって事で手を出そうたって、戦力差は一目瞭然。真面な奴が死ぬ気で止めるだろうし。こんな感じだな信用する根拠は」
「はぁ」
こう言って飯島は一旦言葉を区切った。
「司令、念の為に対空、対潜の警戒命令を進言します」
「ん?」
「水上には脅威を認められませんが状況はその他攻撃手段への警戒態勢に移行するのには最適と判断します」
「よろしい。石倉、聞こえたか? 」
満足した顔で安達は手に持っていた受話器を耳につけた。
「救助艦と被救助艦以外に今の通り命令を出せ。『さんふらわ』の方にも連絡しろ。もうさっきの件は答え出てるだろうよ。『しらたか』には要救助者の『おうみ』移乗完了次第『おうみ』を護衛して海保の巡視船とランデブーさせろと命令しろ」
「はい」
「本艦は念の為33号(SH60K)を対潜装備で飛ばします」
「ああ、お願い」
飯島は艦長席の電話で真中飛行長に命令を出した。伝え終わってから飯島は肝心な部署に連絡していない事を思い出し、下ろした受話器をすぐさま持ち上げた。
「艦艇整備科初芝です」
「飯島だ。整備長、もうすぐ仕事になるぞ。直ぐに必要なデーターを送る」
「はい。その前に必要な機材を甲板に出したいのでエレベーターの使用許可を」
「許可する。搬出作業に人手が必要ならすぐさま申し出ろ」
「了解。では搬出作業にかかります」
「よろしい。かかれ」
ようやく指示を終えた飯島はCICのレーダー画面を見てから思わず自分の足許を見てしまった。
(自分で言っといて何だか。あんな話したら気になって仕方ない)
こんな事を考えながら飯島はソナーに異常がないかと中村と水雷長に尋ねていた。




