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44.終わらせる為の初動

『温州』

「はぁ…はぁ…」

水雷長が肩で大きく息をしながら抱えていた消火器を落とした。その消火器が彼の足に落ちその痛みに水雷長は我に返りすぐさま気絶した政治委員のホルスターから拳銃を抜き取り自身の顎の下に銃口を突きつけようとした。

「待て!!早まるな!!」

水雷長の行動を察した砲術長が彼を羽交い絞めにし部下に拳銃を取り上げる様に命じた。

「離せ!!離してくれ!!こんな事しちまったんだ!!どのみち死ぬなら自分でやらせてくれ。収容所行ってまで殺されるぐらいなら、迷惑だろうがここで!!」

「え――い!!落ち着け、とりあえず落ち着け」

羽交い絞めにされながらもまだ水雷長はジタバタしていた。砲術長は銃を取り上げさせた部下に足を抑えろと更に命じた。

「ジタバタするな。砲術長、水雷長を椅子に座らせろ」

それを見ていた副長は一回深呼吸してから言った。砲術長はなんとか水雷長を椅子に座らせ椅子の下に置いてあった水のペットボトルを取り上げ強引に飲ませた。それで少しだけ水雷長が落ち着いたようなので副長はゆっくりと水雷長だけでなくCICにいた全員に言い含めるように喋り始めた。

「先程の哨戒艇の砲撃の際に夏政治委員はバランスを崩し、艦長用のコンソールに後頭部を強打、意識なし。また、CICの監視カメラはミサイル攻撃以降、故障で修理中、政治委員の『事故』は映像の記録なし。事故の瞬間は私と水雷長が目撃」

ここまで言って副長はCICの全員を見渡した。その眼は「わかるな?」と言っていた。乗員は全員無言で頷いた。

「応急指揮所、副長だ」

それを確認した副長が艦内電話を応急指揮所に繋げた。

「はい」

すぐさま応急指揮所が答えた。

「もう一度確認したい。先程の砲撃はどこに命中した?」

「は、第6ハッチを直撃しそこで爆発、火災発生。ミサイルへの誘爆阻止の為に担当の1班以外の応急班に応援を命じました」

「了解。……水雷長」

それで電話を切り水雷長に目を向けた。

「聞いての通りだ。いまいち分かりづらい、水雷長は直ちに水雷士に指揮権を委譲し当該区画に向かい状況を確認せよ」

「はぁ……」

「その際に火災に遭遇する可能性がある為、消火器を携行せよ」

水雷長の足元に目を向けながら言った。

「ハッチがなくなってるからな、うっかり落とすなよ。海に落とすかもしれないから」

「はっ」

水雷長は消火器を拾い上げCICから飛び出した。


同時刻 東京都品川区 『ファインマート』グランドコモンズ店

「はい、ではこれで」

新聞配達店の人間が検品済みのサインを納品書に書きながら言った。店長はそれを聞きながらバイトと共に納品された雑誌と新聞をラックに並べ始めた。店長は配送センターからの弁当の納品時間まで後どれぐらいだったかなと考えながら外に目をやると何人かの影が店に向かってくるのが見えた。スーツ姿や作業服など服装はまちまちだったが誰もが大きめの旅行カバンを抱えていたので朝イチの電車で出張に向かう人間だろうなとなんとなく思った。

「いらっしゃいませ」

先頭の一人が店に入ったのを見て店長は言った。彼らは弁当コーナーと冷蔵庫を一瞥しとりあえず適当な物をカゴに放り込み、店長達が雑誌を並べ終えた時にすぐさま雑誌コーナーに向かって新聞や雑誌も放り込んだ。その新聞と雑誌は日毎、東新、経通とその系列の物になぜか統一されていた。

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