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43.愛想の尽き果てる時

『くまたか』は速度を上げ『温州』に近づこうとした。

「『温州』の進路を塞ぐぞ。奴の鼻先に行け」

「艦首ですか?」

神崎の命令を副長が確認した。

「ああ、艦尾側では機関砲があるからな」

副長の問い掛けに神崎はそう答えた。副長はさらに質問しようとしたがとりあえず兼任している航海長の立場としての仕事をしようと操舵員に進路を指示した。

「ですが、艇長。艦首には主砲がありますが?」

「大丈夫だ。俺の読み通りなら主砲は撃てない公算は低くない。撃てても本艇の速度と機動性ならどうにかなるさ」

青い顔した副長の顔をさらに青くしない様に努めて楽観的な感じで言った。

「はぁ……」

「ほれ、そんなこと言ってる暇があれば兵装の再確認、やっとけ。いざって時に使えなければホントにしたくない後悔する事になるぞ」

神崎はそれだけ言って艇長席のベルトを確認しつつ影しか見えない『温州』を睨んだ。


『温州』

「主砲、手動管制に切り替え、完了」

砲雷長が副長に報告した。

「よし、目標は本艦に接近中にの哨戒艇。直ちに撃ち方始め」

副長は内心の焦りを隠しながら命じた。砲術科はモニターと光学照準で狙いを付けトリガーを引いた。主砲は『くまたか』を撃沈する為に砲弾を放つが『くまたか』はある程度近づいた所で不規則なジグザグ運動、減速と増速を繰り返し、回避し続けた。『くまたか』はなんとか自身の主砲の射程圏内に相手を捉えるとお返しと言わんばかりに76ミリ砲を撃ち始めた。『温州』とは違いレーダーもFCSも健在な『くまたか』の砲撃は最初の一撃で艦首にある揚錨機と旗竿の中間に命中し錨鎖がちぎれ飛び、破片が主砲や艦橋に襲いかかった。

「喰らったか!?被害報告」

副長が受話器を掴み上げ叫んだ。

「航海長より、CIC。吹き飛ばされた錨鎖が艦橋を直撃、割れたガラスで2名負傷。現在、機材を点検中」

先程のパニックから立ち直った航海長が今度は冷静に報告した。次に報告したのは『くらま』の攻撃の為に臨時に配置された主砲塔の砲員であった。

「主砲塔より、CIC。先程の攻撃の際に林少尉、負傷。意識不明により指揮不能。砲塔は旋回装置と砲身に異常が認められる。現在、原因調査中」

(まずい……。もはやここまでか)

この2件の報告で副長はそう思った。彼は艦長席に我が物顔で座っている不機嫌丸出しな政治委員に顔を向けた。

「政治委員」

「なんだ?」

副長の真面目な顔に気付いた政治委員がイラつきながら言った。

「本艦はほぼ戦闘能力を喪失しました。ご指示を」

「あん!?なんだと!?戦えんだと?ふざけるな!!あんな小舟なんぞ体当たりすれば片付く。とっととぶつけろ!!」

「それでは本艦もタダでは済みません。ただでさえ、小さくない損傷がありますので――」

「なんだ貴様もあの腰抜け艦長と同類か?よかろう」

副長の言葉を聞き、それだけ言って政治委員は腰の拳銃を抜き副長に突きつけようとした。副長はその時、政治委員の背後に気付きなんとか自分に注意を引きつけようと言葉を考えようとしたが『くまたか』の砲撃が今度は艦橋の下部に命中し船体は激しく揺れ、政治委員はバランスを崩して後ろに転倒する筈が後頭部に強い衝撃を感じた彼は吹っ飛ばされる様に前に倒れ込み机の角に頭を打ち意識を手放した。政治委員の後ろには左腕の包帯から血を滲ませた水雷長が消火器を抱えて放心した顔で立ってていた。

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