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42.どのみち誰かがやらなければならない事

『くまたか』

「艇長、神崎です」

川崎司令からの通達ではなく通信と報告を受け怪訝に思いながら神崎俊哉3等海佐は受話器を上げた。

「川崎だ。神崎、こちらでは『温州』のレーダー波が消えたがそちらではどうだ?」

その通信を横で聞いていた副長が自分に目を向けた神崎に頷いた。

「はい。こちらでも確認しました」

「そうか、そちらの方が相手に近いが何が起きたかわかるか?」

「いえ、もう少し近づけばはっきりしますが……」

「そうか。神崎、すまないが先程と同じ様に相手に近付けると思うか?」

「本艇の速度と機動性があれば近付く事は可能ですが、先程の様にはいかないでしょうが……」

「わかった。神崎」

それまでとは明らかに違う声で川崎が神崎の名前を呼んだ。

「はい」

それに釣られて神崎も気を引き締めた。

「『おおわし』はこれより『はやぶさ』から収容した負傷者の搬送作業に移る。『くまたか』は『温州』に再度接近し、牽制しつつ目標の状況を確認し報告せよ」

「!!、危険です。現状では目標の状態を最も確認できるのは我々ですが相手は我々は元より自分の味方に攻撃を加えた輩です。私は」

「それは言われなくてもわかっている。だが、現状では君らしかいないのだやってくれ!!」

神崎の言葉を途中で遮り、後半は叫びたい衝動をなんとか抑えようとしたが抑えきれずに大声で川崎が言った。それを聞き神崎は遮られた言葉の続きを言うのを止めた。

「了解。『くまたか』はこれより『温州』に再度接近。目標の状況確認にかかります」

「頼む。武器の使用については緊急避難、正当防衛に該当する状況ならいつでも使って構わん」

「はっ」

「交信終わり。…………すまない」

最期の言葉は受話器を耳に当てていた神崎だけが聞こえる様な小さい声だった。それを聞いてから神崎は受話器を置いた。

「艇長……」

青ざめるだけ青ざめた悲壮感あふれる顔で副長が言った。

「やるしかあるまい。どのみち誰かがやらなければならない事だ。それが我々だったってだけだ」

そう言って神崎は傍らに置いていた『艇長』と書かれた鉄帽を被ってあご紐を締め、乗員に命令を出した。

それに従い『くまたか』は『温州』に向かった。


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