4.教練
「推進音聴知、補給作業中止。」
全艦放送でこの言葉が流れた瞬間甲板作業中の乗員は一瞬顔をしかめたが、幹部と先任達はすぐさま指示を飛ばした。
「作業中止!!「うみわし」に給油ホース内の燃料入り次第ホース外せと伝え。」
「給油員、供給止め、ホース回収作業用意。」
「第1(クレーン)、戻せ。第2は荷下ろし急げ。」
「おい、そこのパレットは格納庫に運べ、向こうのは昇降機に載せろ。」
慌ただしく乗員たちが走り回る中、給油を終わらせてホースを外した「うみわし」が「くらま」からゆっくりと離れ僚艦に合流してゆく。
この間にも音を拾った想定のヘリからデータリンクで情報が渡されて、戦闘態勢を整えてゆく、くらまの甲板でも物資の収容作業が完了し乗員は休むことなく己の持ち場に着く。
「艦長、総員配置に付きました。対潜戦闘準備良し。」
副長から報告を受け、飯島は指示と確認を行った。
「対潜戦闘始め、目標に最も近い艦知らせ。」
「CIC、艦橋。『おおわし』が目標に一番近い。」
「「おおわし」を攻撃担当に指定。本艦並び僚艦、ヘリは目標の位置把握、周辺警戒に努めよ。」
現状で一番階級が上の飯島が司令代理として隊に指示を飛ばす。
「「おおわし」アスロック発射、目標ポイントに向け飛翔中。目標より注水音、魚雷発射の恐れアリ。」
「砲雷長、デコイ用意。タイミングは任せる。」
「了解、準備します。」
「くらま」が魚雷対策を行っている中でもアスロックは各艦のデータ上で目標に突き進んでゆく。
「アスロック着弾まで5秒4、目標より魚雷音らしきもの確認、弾数不明。弾着音でソナー効力低下。されど目標から圧壊音確認、撃沈確実。」
「航海長操艦、最大戦速。回避運動適宜、ソナー回復までの時間稼げ。」
「航海長頂きます、最大戦速、回避適宜、ソナー回復までの時間稼ぎます。」
航海長がCICから情報を貰いつつ操舵員に指示を与える。
「ソナー、回復。弾数3、距離3000、2つは本艦に1つは「うみわし」が目標と思われる。」
「艦長操艦する。第2戦速まで落とせ、デコイ発射と同時に機関停止。砲雷長頼んだぞ。」
「了解、まだ、もうちょい・・・発射。」
「機関停止」
惰性でしばらく進んで艦は止まった。
「魚雷1、デコイに命中。残り1、左舷に突っ込んでくる。命中。」
「被害報告。」
飯島は短く命じた。
「魚雷、第1倉庫に命中。浸水および火災発生。」
「第1分隊、負傷者青木1曹、多田1士。応急処置始め。」
「第2分隊、人的被害なし。」
「第3分隊、機関長、山崎曹長負傷、井上機関士これより指揮を執る。」
「第4分隊、矢野2曹負傷、調理室にて火災、現在消火作業中。」
「第5分隊、人的被害なし。」
次々と被害が伝えられてゆく。
(少し、想定がキツイか?)
ダメコンの指揮を執る応急長の指示をインカムで聞きながら飯島は思案に沈んでいた。応急長と衛生長から作業終了の報告を受け思案を打ち切り訓練終了を命じた。
作中に出たおおわし、うみわしとは2話に出てきた大型哨戒艦(おおわし型哨戒艦)になります。大雑把なデータですが、排水量約1400トン、全長95、全幅12、速力40ノット、装備主砲76ミリ単装砲×1、18式垂直発射装置16セル、M2重機関銃2丁
PG811おおわしPG812いぬわしPG813うみわし