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30.殺しに来たなら殺される覚悟を持て

『おおわし』

「司令、群司令より入電。(2哨戒は『はやぶさ』の救助活動にかかれ)」

艦長代行を務める寺原人志副長が司令席にいた川崎司2佐に伝えた。

「うむ、『おおわし』はこれより『はやぶさ』に接近を、『くまたか』は目標Dに対して接近、派手に動いて相手を牽制しろ」

川崎は僚艦に通信を繋げ命令を下した。

「司令、よろしいでしょうか?」

寺原が川崎に近づき小声で言った。

「なんだ?」

つられて川崎も小声になった。

「本艦は、目標Dからの攻撃で船体に明確な損傷を与えられました、また艦長始め8名の人的被害が出ています。これ以上の攻撃を受けた場合は本艦は……」

「続けて」

少し言い淀んだ寺原に川崎は続きを促した。

「我々は現在、海上警備でココにいますが、武器の使用は現状では可能でしょうか?」

意を決した寺原が一番聞きたかった事を聞いた。

「主砲並び機銃は使ってよろしい、沈めないように撃て」

川崎はこう答えた。

「!!本気ですか」

自分が聞いた事だと忘れて思わず川崎を問い質した。

「相手は他所様の庭に明らかな武器持って土足で踏み込んだ挙句他所様の住人に手を出した挙句に助けに来た我々にまで攻撃の意思を単純明快な行動で示したんだ。正当防衛、緊急避難の要件は誰が見たって成立しているんだ、この可能性を踏まえて司令はずっと映像の記録を命じたんだ」

ここまで言って川崎は目の前の若い3佐の顔を見た。

(後一言だな)

川崎はそう思い、こう言った。

「相手はあんな真似したんだ、殺すなら返り討ちで殺される覚悟がなきゃいけない事を教えてやれ」

この言葉を聞き寺原代行は腹を固めたらしくこの質問を打ち切った。

「代行より砲雷長。対水上戦闘用意、主砲と機銃をいつでも使えるようにしろ」

これだけ伝えて寺原は艦橋の割れた窓から入って来る潮風にあたっていた。潮風は彼が負傷していた左頬と左腕にも当たり包帯越しに染みた潮気に彼は少し顔を顰め腕を抑えていた。




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