27. 言い逃れ不能
「さんふらわ」デッキ
「確かにコリャ酷い音だな」
ガンマイクから音を拾っていた太田が顔をしかめながら言った。
「確かに耳栓で防いだつもりでもコレ、骨に響きますね」
太田を手伝っていた仲田が同じく顔をしかめながら言った。
「とりあえず、耐えられる範疇なのが救いだろう。おい、与座」
玉城が腕時計を指差しながら声を掛けた。
「あ、はい。今、繋がります」
「よし、みんな準備は?」
玉城がクルーに確認し、彼らは全員がOKのサインを出した。
「玉城さん、町田です。今、現在の状況はいかがでしょうか?」
スタジオと繋がった。
「はい、先程、海上自衛隊の方から攻撃をやめ自分らに従えといった意味の呼び掛けがもう一度ありました。また、これ以上の攻撃がある場合は自衛権を行使し日本人の生命を守るとも付け加えています」
この後しばらくスタジオでのやりとりがあったらしくしばらく静かになった。
「玉城さん」
町田アナがようやく玉城に声をかけた。
「はい」
「自衛隊は間違いなく自衛権を行使すると言ったのですね?」
「武力行使を続ける場合はと限定して言っていました」
言い漏らしがないか慎重に玉城は答えた。
「それに対して中国側は何か反応がありましたか?」
「こちらがわかる限りではあちらの海自艦艇の1隻に確認できるだけでは2隻が近付こうとしましたが数隻の海自の艦艇に止められました」
「海自の方はその間は動きはどうでしょうか?」
「中国艦艇が動いている最中に我々に向かって『騒音に注意』と警告がありました。その後、聞こえるでしょうか?現在このあたり一面に奇妙な音が聞こえてきます。現在、我々は――」
この時、辺りを撮影していたカメラは偶然にも『温州』を捉えていた、『温州』の主砲が自艦にLRADを向けていた哨戒艇に砲身を向けた所をファインダー越しに見ていた荒木が気付いた時には哨戒艇から長方形のコンテナのような物が吹き飛び、それは空中を舞い上がって盛大に爆発していた。爆発音に混じって別の方向からも銃声と思しき音も聞こえ荒木は玉城が指示を出す前にそちらへとカメラを向けていた。