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26.愚者の暴発

「千島湖」艦橋

「うぎゃぁああぁ」

政治委員と取り巻き一同の叫び声がさほど広くない艦橋内に響き渡った。

LRADの音よりその声に顔をしかめながら楊艦長は航海長の肩を叩いた、歯を食いしばって轟音に耐えていた航海長は肩を叩かれてようやく艦長が自分の傍に来ていたことに気づいた。

「取舵一杯。目標の艦尾に抜けるぞ」

楊艦長は『くらま』の艦尾を指差して航海長の耳元で叫んだ。

「了解。取舵一杯」

航海長は楊艦長を倣って操舵員に近づき肩を叩いてから顔を耳元に近づけて命令した。

『千鳥湖』が動き出した事に取り巻きの一人がそれに気付き政治委員に伝え、ようやく気付いた政治委員は艦長に詰め寄ろうとしたが急激に舵を切った為に自分の席から立つ事もできず席の肘あてを力を込めて握り締めて体を支えながら怒鳴った。

「艦長、何を勝手に艦を動かしている!!直ちに止めろ!!」

「現在、この本艦は日本の妨害行動を受けています。よって自分は艦長としてこの艦を守る行動をとる為に然るべき行動を取っているだけです」

「貴様、私の承諾もなしに!!」

「では、あのままあそこに留まって彼らのされるがままでよろしかったのでしょうか?」

二人のやり取りをなんとか聞いていた洸司令が艦長に助け舟を出した。先程のLRADの攻撃を思い出した政治委員は苦虫を噛み潰した顔で艦長への追求を止めた。

「くっ、まあいい。あの非常時だ、今回は見逃そう。それより洸司令、他の2艦の状況は?」

「たった今、現状報告せよと通信を送りました、間もなく答えてくるかと」

「衛生、入ります」

艦橋に衛生員が上がってきた。それを見た楊艦長は自らも手伝い遮る物も無くLRADの攻撃を受けた見張り員を衛生員に託した。

「艦長、司令。『温州』並び『寧波』より入電」

艦長付きの若い水兵が楊に声を掛けた。

「読んで」

「我、日本艦より音響兵器による攻撃を受ける現ざ」

ここまで言って彼は喋るのを止めた。

何故なら『寧波』のいる方角からLRADの音に混じって銃声と砲声が響き渡ったのだ。その後、『温州』の方向からも同様の音が聞こえ、そちらからはさらに爆発音が微かに聞こえてきた。



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