23.お荷物の取り扱い
「自衛権を行使するだァ?小日本め調子に乗りおって」
派遣艦隊司令部付きの政治委員が旗艦「千島湖」の艦橋で聞いた警告に対する反応はこうだった。
「全くです。ふざけてます」
「そうだ、そうだ」
そのような事を取り巻きの司令部要員が言い、政治委員の顔は誰の目からも解るぐらいにほころんでいた。
(ったく、こんなボンクラ寄越しやがって、さっきの民間船に攻撃しろと言っときながら発砲音聞くなり耳塞いで脂汗かいてたのはどこのどいつだ)
顔に出ないようにしながら羅針盤の隣に立って極力相手の顔を見ないようにしながら派遣艦隊司令の洸少将は思った。
(古参の党軍事委員の直系の子息なんだからこんなトコまでノコノコこなくてもいいのに普通なら総参謀部の海軍局か国防部(国防省)で椅子にふんぞり返ってるのがお似合いの人間だろコレ、来た時に自分の取り巻き連れてきたと思えば司令部要員の半分を取り巻き連中に取り替えやがっておかげで苦労が増えたじゃないか)
艦橋のガラスに映る政治委員を睨みながら毒づいた。当の政治委員は睨まれてるのも気づかず取り巻きのおべんちゃらに酔いしれていた。
「で、司令これからは?」
羅針盤の前に立つ艦長の楊上校が群れ(政治委員一派)に聞こえないように声を抑えて訪ねた。
「とりあえず、理想としては現段階で政治レベルで話が付いて俺たちに撤収命令が出る事ことだが、まぁ昨今の情勢上それは難しいだろう、現実的にはこちらも被害が出て痛み分けの状態で撤収だろうがこれもまた問題だろうしな」
目だけを動かし後ろを見た。
「あの人なら自分に被害がなければ多少の被害でも戦果を欲しがるでしょうからね」
「だろ、だから現場の我々の理想としてはアチラさんの初手であの阿呆の恐怖心を刺激してもらって撤収命令を自分の口から出して貰う事だよ」
「確かに一番理想的ですが上手くいきますかね?」
楊艦長が一番の疑問を口にした。
「そこの所は相手が世界でも屈指の練度を誇る海軍相手だよそこを救いと思おう、数の不利を練度で補うのは日本の伝統だろ」
洸司令は「千島湖」に対峙している「くらま」を見ながら言った。
その背後から政治委員の品のなさがよく解る笑い声が響いていた。




