14.中継準備開始21:47
音は玉城達が先程までいたデッキの方向から聞こえてきた。
「糞、脅しじゃないってことか。」
船長が呟いた。すぐそばに居たために玉城の耳にはハッキリとそれが聞こえた。
「何ですか?それ」
思わず口に出ていた。
「さっきの話の続きだが、通信であの船は自分は中国人民海軍の艦だと言って、こちらに対して領海侵犯をしているのですぐに出てゆく様にと言ってきたんだ。」
「では、先程の金城さんとのやり取りはそれについての話だったんですか?」
玉城がブリッジに入ってきた時の二人の会話を思い出して訪ねていた。脇では名護原が質問は玉城に任せて記事に使うためにメモを取っていた。
「ああ、ただ金城さんがね・・・」
船長は横で音を聞いてから徐々に青ざめた顔になっていく金城に視線を向けた。
「反対したんですか?」
それを見て思いついたことを聞いてみた。
「それもそうですが、向こうの通信を聞いた途端に金城さんが通信機ひったくって(ふざけるな!ここは日本の海だ、寝言言ってないでそっちこそとっと帰れ。)って言ったら向こうのお偉いさんらしき人が出て、しばらく金城さんと英語でやり取りしてたけどその内に向こうが(もういい、ごちゃごちゃ言ってないでとっと帰れ。)って言って後で(警告だ、これで帰ればよし、帰らなければこちらは実力行使に移るぞ)と言って一方的に通信を断った。それで私は引き返すべきだと「あまみ丸」の船長に言ったらアチラはそのつもりだったらしくて二つ返事でOKしてくれたのだが・・・」
「金城さんが反対したと。」
名護原が話の流れから答えを出した。
「どうせ脅しだと思ったんだコッチは只の民間船で乗ってるのも民間人。アチラに撃つ大義名分なんてどこにもないって・・・」
言い訳がましい言葉を金城は呟いていた。
「ちょっと、荒木達の様子を見てくる。」
玉城はこちらとの会話を止め、被害状況の確認を始めた船長達に礼を言ってブリッジを後にした。
「もしもし、チーフ、玉城です。」
デッキに向かう最中に衛星携帯で上司に電話して状況を知らせた。
「・・・・わかった。ちょっと待ってろ。」
話を聞いてる時から何かガサゴソやっていた、チーフディレクターは電話の向こうで何人かとやり取りを交わしながら少しの間玉城を待たせた。
「いいか、部長が来てたから今の話は全部聞いてもらった。確認するが、お前の班には天気予報用に中継の機材を持たせていたはずだが間違いないか?」
「はい」
「よし、いいだろう。いいかよく聞け・・・・・・・」
チーフはこれからの指示を伝えた。
「!!はい、わかりました。」
それを聞いた玉城から緊迫した空気が流れた。
「どうしたの?」
「急ごう」
名護原の質問にそれだけ言って玉城は走り出した。
「ちょ、ちょっと待て、何なんだ?」
名護原もそれを追うように走り出した。
デッキでは先程の発砲で動揺していた荒木達クルーが玉城に向かってきた。
「全員無事か?」
玉城はまず安否を尋ねた。
「はい、だけどありゃ・・・」
代表して太田が尋ねようとしたが玉城はそれを遮り荒木に問い掛けた。
「さっきのやつ、撮れたか?」
「え?は、はい」
動揺しながらも撮影は止めていなかった様だ。
「よし、いいぞ、荒木、お前は今の内にテープチェンジしとけ、仲田、与座お前ら二人は中継用の機材持ってきて準備しろ、太田さんスイマセンが二人についてやってください」
玉城が矢継ぎ早に指示を飛ばしてゆく
「玉城D、一体どうしたんだ?」
太田が再度質問した。
「ニュース22でコイツを流す、準備お願いします。」
それだけ言って玉城は中継用のレポートをまとめようとノートに今までの事を書きなぐり整理を始めた。
機材に関しては都合がいいと思いますが地方局で人手がないのでついで仕事を押し付けられたとゆうことでご理解ください。誤字の指摘、感想などございましたらお気軽に