11.士官室にて [今日、最初のニュースです。]
佐世保出港から1週間後、航路途中にて「おうみ」と合流した「くらま」以下哨戒隊は一路沖縄本島北西の訓練海域に向かった。
「くらま」士官室
「---では、訓練内容の変更点は「おうみ」の部分だけでいいのですね?」
石倉首席幕僚が安達に確認していた。
「うん、ソコだけでいいよ。戸田艦長、そう言う事だからよろしく。」
「はい」
安達に声を掛けられた「おうみ」の戸田明久艦長は答えた。
「封密書の作成はコッチで今言った追加分を作成させてるから帰りに受け取るように。」
各艦艇の指揮官を集めてのブリーフィングは滞りなく進んでいた。
「他は何も無いな。それじゃこれにて終了だ。飯島、各艦に迎えを寄越すように伝えてくれ。」
安達が終了を宣言して、飯島に命じた。
「了解しました。・・・副長、艦長だ各艦に迎えを寄越すように伝え。・・・そうだ「はやぶさ」型はこちらで内火艇で出して送るように。」
艦内電話で必要な指示を飯島が伝えてゆく。
「藤代3尉、入ります。」
司令部公室の当直でブリーフィングに出ていなかった藤代が、若干蒼ざめた顔をして入室した。
「藤代、どうした?」
その顔を見た安達が努めて落ち着いた様子で聞いた。
「司令、これを」
その質問に答えず藤代は通信用紙を差し出し、それを見た安達はほんの一瞬だけ呆れた様な顔であった。
「全員、帰艦待て。たった今尖閣諸島近海で中国軍艦艇が民間船と思しきものに対して攻撃中と連絡があった。」
その言葉を聴き士官室の空気は凍りついた。
「司令、我々にはどのような命令が?」
前もって話は聞いていた飯島はその空気を壊すべく安達に質問した。
「いや、この連絡だけだ、上もまだ碌な情報が無いようだからとりあえず今ある情報は流しておくべきと判断したんだろう。いずれにしろ当該海域に一番近い我々には何かしらの指示がおっつけやってくるだろう。各自、いつでも目的海域に向かえる様に。また、どのような命令が来るかも解らんからそれも頭に入れて置くように。なお、「おうみ」は補給隊より新たな命令なき場合は哨戒隊群司令の指揮下にて行動すべしの命令が有効のためとりあえず「くらま」護衛の元、行動してもらう。では、今度こそ解散。」
指揮官たちは迎えの内火艇に乗り込むと可能な限り急いで戻っていった。
22:00テレビ日本 ニュース22
「今晩は、今日最初のニュースは先程入ってきたニュースです。沖縄の尖閣諸島西の海域にて中国海軍の艦艇が日本の民間船に銃撃を加えました。怪我人も出た模様です。今日、午後9時45分ごろ尖閣諸島沖合いで領海侵犯していた中国海軍の艦艇が付近を航行中の「あまみ丸」「さんふらわ号」の2隻の民間船に対し発砲した模様です。このニュース、まもなく総理官邸からの会見が始まりますので後ほど続きをお送りしたいと思います。では次の-------」
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