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1−2廊下にて 

 天草先輩、N県立海三高校かいざんこうこう二年生。名前は秘密らしい。理由は女の子らしくないからだそうである。なので、人は皆親しみを込めて天草先輩と呼ぶ。同級生と上級生は天草と呼び捨てされることが多い。

肩にかかる艶やかな黒髪はまるで吸い込ませるように漆黒で、すれちがう人は思わず歩みを止めてしまう。二重の大きな目は、つやがあり活力がみなぎっていることを示す。活動的な本人の本質を表していると言えよう。鼻の形も整っており、小さな口と共に美少女と多くの人に称されるのも自然なことだ。

 ミスマッチなところがあるとすれば、黒髪に混じる一房の赤い髪と信じられないほど大きくあく、あのお口なのだが。

「こんにちは、天草先輩」

 天斗は先に挨拶をする。

「やあ、天斗君。ご機嫌はいかがかな」

「まあ、ほどほどというところです。どちらに行かれるところですか?この時間ですから生徒会とか」

「大当たり。よくわかってるね、感心しちゃう。それはそうと、君は部室かい」

「そうです。そういえば、優花がよろしく伝えてくれと言ってましたね。その節は助かりました」

「こちらとしては、どちらにせよやらなければならないことだったし、そこまで気にするものでもないよ。まあ、君がそこまでいうのならば今度駅前のガブローでウルトラスーパースイートパフェ、トッピング全部のせでも奢ってもらおうか」

 天草は、これはいい機会とちゃっかりおねだりする。抜け目ないやつだ。天斗は少しだけ悩む様子を見せる。安易に受け答えするのは、後で取り返しの付かない悲劇を生むと今までの経験から学んでいるからである。

「まあ、いいですけど、そのかわり1000円までですよ。1万円とかだと費用対価に見合わないですから」

「やった。楽しみだなぁ」

 無邪気に喜ぶ天草の姿は、大人っぽい少女が見せる子供のような一面。このギャップが数多の少年・少女の心をぶち抜いてきたのである。ひとしきり喜んだ後、天草はこう言った。

「どう……、惚れちゃった?」

 まったくこの人はと呆れる。

「僕には通じませんよ。もっと直接的でないと」

「直接的なんて、えろいなぁ、天斗君は」

 そう言ってからかった後、きりっとした顔になって切り出した。

「私から君に伝えるべきことがあるのだけど、良いニュースと悪いニュースのどちらから先に聞きたい?」

 天草は不敵な笑みを浮かべながら問いかけてきたのだった。

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