表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の使徒  作者: 黒杜
71/78

4章・【ザ・ファイア】⑧

「我々も行くぞ」


「うん------へぇっ!!?」


急に目線が高くなった。

同時に体が持ち上げられているという認識。

アローディスの右肩に、紫苑は軽々と抱え上げられている。


「ちょっ!!降ろしてって!!」


紫苑はアローディスの背中をバンバン叩いて抗議するが、全く痛がっている様子はない。


「では問うが、お前は屋根に飛び移りながら走れるか?」


「え------?無理……ですが」


「ならば仕方ない。大人しく荷物になっておけ」


無茶苦茶な理論で片づけられ、紫苑は更に強く背中を叩いた。


「いや、だから降ろしてって!!------うわぁぁぁ!!」


------飛翔。

アローディスが強く地面を蹴り、高く高く飛び上がった。

町並みが、遥か眼下に広がる。五階立てビルの屋上から、町を見下ろしているような感じだ。アローディスは、空中で一瞬だけ滞空すると、斜め下に落下していく。

地上との距離がぐんぐん近づき、紫苑は下降の強風に煽られて目を閉じた。

再び体が浮くような感覚が紫苑を襲い、前方から吹く風が顔を撫でて遥か後方に流れていく。恐る恐る目を開けると、アローディスは本当に屋根の上を走っていた。


「………………」


紫苑はあまりの驚きに、口が聞けなくなっていた。

アローディスは屋根から屋根へ、前に横に斜めに走り、まるで雷になったようだ。

そして、だんだん近づいてくる漆黒の火柱。

近づくたび、肌を焦がす熱気がじわじわと強くなる。

紫苑の額から、その熱気とは正反対の冷たい汗が流れた。


「------ひどいな」


アローディスが紫苑を肩から降ろした。

紫苑はアローディスに掴まりながら、腰の剣がずり抜けないように気をつけて、地面に足を着けた。

どうやら、地上らしい。

石畳の感触が、ブーツを通して伝わってくる。

紫苑はそんな事は気にならなかった。

ただ、目の前の光景に目を奪われていたのだった。


町の最奥、他の建物より一回り大きな民家が、ごうごうと燃えていた。

石を積み上げて作られた外壁はその石が、炎の熱のせいで液体になって溶けだしていた。

さらさらしたマグマのような液体は、石畳の隙間を縫うように流れ、近くの木製の物を燃やしていく。


その業火の中に、一人の子供が立っていた。

炎に包まれていないのに、何ともないようだ。

その子は、炎の揺らめきで表情は見えないが、紫苑達に迫ってきているようだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ