4章・クラスウッド火町②
一本道を上りきって、紫苑達の目の前には、町の入り口。
そこから急に、道が花崗岩のような色のタイルで敷き詰められている。
道の両端には、ずらりと並ぶ建物。
大抵の建物は、道と同じ白濁色の石造りで、町全体が単調な色だ。
まるで、町が一つの岩から切り出された彫刻のよう。
民家の二階部分に当たるのだろう、ベランダに干された色とりどりの洗濯物が目に鮮やかだ。紫苑は町をキョロキョロ見回すのに一生懸命で、立ち止まったアローディスにぶつかってしまった。
「あいたっ!」
「……こちらのセリフだ」
アローディスは首だけを紫苑の方に向けて、じろりと見下ろした。
そしてリスラスに視線を向けてから、紫苑達に向き合った。
「ここから先、私の仮説が正しければ、『使徒』がいつ襲ってくるかもわからん状態だ。気を抜くな」
アローディスの言葉に、みんな緊張した面もちで首を縦に振った。
リスラスとアローディスの位置が入れ替わり、アローディスが先頭でクラスウッド火町に踏み込んだ。
「わぁ------」
紫苑の口から意図せず言葉が漏れたのは、おそらくイメージが外れたからだろう。
『クラスウッド火町』、その名から想像されるイメージは、近くに活火山があり、そのために食料品等の生産量が少ない、荒んだ様子。
だが、紫苑が勝手に抱いていたそれは、ものの見事に打ち砕かれる事となる。
「綺麗な町だねっ!」
ウキウキして朗らかなルナセルの言う通り、クラスウッド火町は、至って普通の町だった。
活火山などは存在しないし、青果店らしき店の軒先には、かごに盛られた色とりどりの果物や野菜がみずみずしい光沢を放っている。
行き交う人々には笑顔が溢れ、町全体に活気があった。
「いらっしゃい、いらっしゃい!今日はきゅうりが安いよっ!!
お、旅の人かい!?寄ってってくれ!安くしとくよ!」
腹回りの肉付きがよい、全体的にぽってりして、鼻の下に豊かな口ひげをたくわえた青果店の店主らしき中年男性が紫苑達に話しかけてくる。
冷たい眼差しで店主を見たアローディスは、無視するのかと思いきや、足を青果店へ向けた。
ザックやルナセル、リスラスはその向かいにある服屋を眺めていて気づいていないようだったので、紫苑は仕方なくアローディスの後を追った。