3章・【ザ・リーフ】⑩
『痛いよぉ、ザックぅ……』
甘えた声を出すルナセルに、ザックはフンと鼻を鳴らした。
「なぁに可愛い子ぶってんだ。いいから早く実体化しろ、さもないと------」
ザックは言いながら親指と中指で輪っかを作る。
デコピンの時のそれだ。
ルナセルのカードの輝きが一層せわしなくなる。
『うあっ!
ちょっと待ってよぉ!
戻る、戻るからぁ!』
半べそのルナセルが黄緑色の光に包まれて、元のルナセルの姿に戻った。
ルナセルは少しむくれてザックを見る。
柔らかそうな頬がぷくっと膨らんだ。
「ザックはいちいち荒いんだよぉ……」
「なんか言ったか?」
ルナセルはムスッとしながらも首を横に振る。
「で、何するの?」
紫苑がザックに尋ねると、ザックはルナセルと紫苑を交互に見て答える。
「これはアローディスの憶測だが、リスラスは何者かに操られている可能性が高い」
「それは僕も思ったなぁ」
ルナセルが渋い顔で頷いた。
「だってリスラスはこんな事する子じゃなかったもん」
「ああ」
ザックもそれに同意した。
そして話を本筋に戻す。
「ルナセル、お前【ヒーリング・スター】は使えるな?」
「使えるよ」
また、効果のわからないアビリティの名前が出て、少し話から浮きかけていた紫苑に、ザックは話を振る。
「紫苑、アローディスの【カード】を出せ」
「えっ?……あぁ、うん」
紫苑は言われるまま、アローディスのカードをポケットから取り出した。
そのカードは、先ほどまでと違い、淡くぼんやりと光を出している。
「ルナセルの【ヒーリング・スター】に、合わせてお前はアローディスが教える言葉を復唱しろ」
紫苑はアローディスのカードを見下ろす。
さっきまでのアローディスの状態を思い出して不安になったからだ。
それに気づいたのか、アローディスはチカチカと光を放つ。
『なんだ、そんな物憂げな顔で見つめおって……』
「だって、大丈夫なの?」
『お前に心配されるほど、弱ってはいない』
今までと変わりない冷たい口調に、紫苑はホッとした。
「わかった」
笑顔で頷く紫苑に、アローディスのカードは一瞬息を飲むように光が揺らぎ、再び瞬きだした。
「で、アローディス。
やる事はわかったが、できたらそれによってリスラスの操り人形状態が解かれる理由を知りたいんだが?」
みんなが感じていたであろう疑問を、ザックが代表して問う。