表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神々の使徒  作者: 黒杜
41/78

3章・【ザ・リーフ】⑨

「あいつを、始末しないとな」


そう言ってリスラスに近寄ろうとするザックの服を、紫苑は思わず掴んでいた。


「ん、なんだ?」


怪訝そうな顔をしてザックは紫苑を振り返る。

紫苑は服を握る手の力を更に込めた。


「始末するって------殺すってこと?」


紫苑の手は震えていた。

襲ってきたリスラスに応戦するのは仕方ないとは思う。

だが、だからといって殺すのは間違っている。

------というか、紫苑は目の前で人が死ぬかもしれないということが怖かったのだ。

そんな紫苑の心境を察したのか、ザックは紫苑の手に自分の手を重ねた。


「殺しはしない、大丈夫だ」


大きくて、力強くて、何より温かい手。

それは太陽の『使徒』なのだから温かいのは当たり前なのだろうが、じんわりと伝わってくる温もりは、明らかに人間のものだった。

ザックの言葉に安心して、紫苑は服から手を離す。

元あるべき位置に戻ろうとする紫苑の腕をザックは掴んだ。


「紫苑も一緒に来い。

きっと、お前の力が必要だ」


強く引っ張られて、紫苑は抗う術もなく、リスラスの方へと半ば強制的に連れていかれる。

リスラスは、微かな寝息をたて、先ほどまでの険しい顔とは打って変わって、年相応の柔らかな顔つきに戻っていた。


「紫苑、ルナセルの【カード】を持っているな?」


ザックはそのそばにしゃがみ込むと、紫苑に問う。

紫苑はカードをしまった制服のズボンのポケットからアローディスのカードとルナセルのカードの二枚を出した。

そして、アローディスのカードだけをポケットにしまい直すと、ルナセルのカードをザックに差し出した。


「持ってるよ」


「よし」


ザックは紫苑からカードを受け取ると、絵の描かれた方を表に向けて、語りかけた。


「ルナセル、起きろ」


すると、その声に呼応するようにチカチカとカードが光った。だが、その光はすぐに消え、また普通のカードに戻ってしまった。

ザックが苦々しげに言う。


「あいつめ、二度寝しやがった……」


【カード】状態の『使徒』が二度寝などをするのか------。

紫苑は想像して、クスクスと笑ってしまう。

ザックは何度も声をかけていたが、面倒くさくなったのか、不意にカードをペシリと叩いた。


『痛ったぁ!』


カードから声が聞こえてくる。それはルナセルの声に間違いなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ