3章・【ザ・リーフ】④
「能力?」
紫苑が不思議そうにつぶやくのと同時に、ザックは眉間にシワを寄せた。
リスラスは口の端に微笑を浮かべながら、自慢話でもするかのような得意げな口調で話す。
「僕のグランドアビリティ------いわゆる【付与能力】は、衛星に影響を与える、【サテライト・ゾーン】」
【サテライト・ゾーン】
直訳すると、衛星の領域。
一体どういうアビリティなのか、紫苑が首をひねっていると、ザックがコソッと教えてくれる。
「【サテライト・ゾーン】は、リスラスのグランドアビリティで衛星に身体的なダメージを与えるものだ。
アローディスは月、地球の衛星だが、ルナセルは星という総称だ。
世界に存在する全ての星を司っている故に、それこそ抱える衛星の数は計り知れない。
だから、意識を混濁するほどの影響を与えられたのだ」
「でもそれってリスラスの司っている【葉】とは関係ないアビリティなんじゃない?」
「グランドアビリティは、司る物に関わらず『使徒』それぞれに与えられた能力のこと。
だから司る対象には関係ないんです」
その疑問には、リスラスが答えた。
紫苑が納得して頷くと、ザックはその耳に囁いた。
「アローディスのことを頼んでいいか?
強情な奴だが、できることなら【カード】に戻るように説得してやってくれ」
「------わかった」
紫苑はザックの後ろから出て、過呼吸のように小刻みに息をしているアローディスに近づく。アローディスはそばに寄ってきた紫苑にチラリと一瞥をくれると今にも消え入りそうな声で言った。
「……なんだ…。
私、なら心配は無用だぞ。
ゴホッ、ゴホゴホッ!!」
アローディスは急に咳き込みだした。
咳の合間に苦しそうな呼吸が続き、紫苑はアローディスの背中をそっとさする。
ザックは、リスラスを睨みつけた。
「早くアビリティを解除しろ!
さもないと本気で仕留めるぞ」
ザックの体から、真っ赤に燃え上がる炎のようなオーラが具現化して立ち上るのが見えた。
紫苑はその威圧感に思わず一歩後ずさった。
しかしリスラスは臆することなく、黒い笑みを浮かべたまま、ザックに言い放つ。
「久しぶりです、この感覚。
では始めましょうか。
------世界をかけたゲームを」