3章・【ザ・リーフ】①
吹きつける乾いた風。
微かに香る草木の匂い。
足元でさわさわと揺れる背丈の低い草。
紫苑は目の前に広がる光景に、目を奪われた。
「ここは------?」
広がるのは青々とした草原。
周囲にはうっそうと森。
森が開け、綺麗な円形に草原がある。
その中央に、紫苑、ザック、アローディス、ルナセルが立っていた。
ザックが周りを見回しながら、顎をさすった。
「ん------、おそらく俺達がいた世界とは別の世界だろう」
「異世界、ってこと?」
ルナセルの言葉にアローディスが頷く。
紫苑は眉間にシワを寄せた。
「異世界転生------?
有り得ないよ」
アローディスがため息をついて、まるで幼稚園児に話しかけるように言う。
「いいか、根拠は二つ」
アローディスは二本指を立てた。
「あの刻印は輪廻を示す文字列でつづられていた」
ザックとルナセルもうんうんと頷く。
どうやら三人には刻印の意味がわかっていたらしい。
「そして、ここは時が動いている。
我々の世界は全機能を停止しているのだ。
以上のことからここは異世界だとわかる」
紫苑は納得せざるをえない状況になる。
現に、頬を撫でる風。
この場所は生きている。
やっぱり異世界だというのは疑いのない事実なのだろうか。
「なんかさぁ……」
ルナセルは顔をしかめて口を開く。
「変な感じ。
さっきから気持ち悪い」
普段も色白なルナセルの顔は、更に青白くなっていた。
小さな体からふらりと力が抜けて倒れそうになるのを、ザックが慌てて支えた。
「ルナセル!?」
ザックの腕の中でルナセルはぐったりと荒い息をしていた。
額には大粒の脂汗がにじみ、その内の一つが頬に伝う。
ザックは動揺して、後ろに立っているはずのアローディスを振り返りながら叫んだ。
「アローディス!
ルナセル……が……」
ザックの言葉の最後が、どんどん小さくなって消えていった。ルナセルの蒼白な顔を見ていた紫苑は、アローディスを見て、叫び声を上げた。
「アローディスッ!!?」