2章・旅立ちの決意②
「私達は人間ではない。
天上におわします神に創造され、遣わされた『使徒』だ」
「『使徒』?」
「『使徒』は、神に造られた、この世界にある二十八の様々な存在の象徴で、それらは二つの種類に分かれている」
アローディスは人差し指を立てる。
「一つ目は、“自然”(ネイチャー)だ。
例えば風、大地、空というような存在」
そして中指。
「もう一つは、“職業”(ジョブ)。
代表的な『使徒』は、執行人、錬金術師、学者などだ」
「あの、ネイチャーはわかるけど、ジョブって神様が作り出したものじゃなくて人間が作ったんじゃないの?」
紫苑は感じた疑問を素直に述べてみる。
「最初、神がお造りになったのはネイチャーだけだった。
だが、この世界は実質人間が支配するようになってしまい、ネイチャー達はその力を更に強くし、世界は一時期文明を自然が飲み込んでしまった。
世界の均衡を崩さぬために、神は人類の作り出したものであるジョブの『使徒』を生み出したのだ
わかったか?」
紫苑はコクンと頷いた。
アローディスは先を続ける。
「そして『使徒』は存在そのものを司っている。
だから世界は『使徒』を失うと、活動を停止してしまうのだ。
今回の場合、そのために世界は止まった」
「あのさ、『使徒』を解放してしまった時に唱えた呪文に灯馬の名前が入っていたんだけど、それってなんで?」
「灯馬の一族は、代々、それこそ神がジョブを作り出してからずっと、『使徒』の力が暴走しないように見守ることを神によって義務づけられてきたのだ。それ故に現在の当主である源一郎は封使大臣をしている」
紫苑は三人をぐるりと見回す。ルナセルが小首を傾げたのが見えた。
「君達三人は、なんでパイプの中に入っていないの?」
「それはね------っ!」
ルナセルが子供らしい無邪気な笑顔を浮かべて紫苑の問いに答える。
「僕等は、『三大使徒』っていって、他の『使徒』とは違う存在なんだ!
例えば……」
ルナセルの短く細い指がザックを指した。
指されたザックは少し驚いたような表情をして、胸の前で腕を組んだ。
「ザックは、『太陽』------。まぁ僕等は【ザ・サン】って呼んでるんだけど。
太陽を司る『使徒』で……」
続いてルナセルの指がアローディスを指す。
「アローディスは、【ザ・ムーン】。
月を司る『使徒』」
そしてルナセルは自分を指す。