2章・ゲームスタート⑤
そう言ってはいるものの、紫苑の額には焦りから、汗が一筋伝った。
「------------」
侑梨は何も言わない。
ただ黙って紫苑は繰り返すのを聞いている。
紫苑は侑梨の目を見据えた。
「君は、誰?」
侑梨の目が怪しく光った。
「僕は、佐伯侑梨。
君の力を試してみたんだ」
「あの『声』は君か?」
「そうだよ。
まんまと君が騙されてくれたおかげだ。
礼を言うよ」
紫苑は罪悪感から一瞬動揺したが、すぐに唇を開く。
「何が目的だ」
「------------」
再び侑梨は黙る。
まるで品定めをするように紫苑を頭の先からつま先までじっくり眺めてから、話し始めた。
「僕とゲームをしよう。
この世界をかけたゲームを」
「ゲーム……?」
「君は『使徒』を解放した。
僕がその使徒をどこかに隠す。君が全員捕まえられたら君の勝ち。
世界は再び動き始める」
「もし、負けたら……?」
侑梨の顔が一層意地悪いものに変わる。
「僕の勝ち。
世界は永久に停止する」
言い終わると、侑梨はくるりと紫苑に背を向けて、部屋の壁に手をついた。
紅い刻印のようなものが、壁の一部に現れた。
白い壁を切り取るかのように、ちょうど扉くらいの大きさの真っ赤な刻印が壁に刻まれる。
侑梨はニコッと無邪気な笑みを浮かべる。
「ここがスタートだよ。
さぁ……よーい、どん!」
そう言うと、侑梨は刻印に向かって近づき、スィッと飲み込まれた。
紫苑は唇を噛む。
その時。
「紫苑------っ!!」
入り口から声がして、見るとザックが叫びながら走ってくる所だった。
「何が起こった?」
倒れている相模を見て、ザックは紫苑に問う。
紫苑はザックを見て、ほとんど泣きそうな顔で言った。
「相模さんを……治療して。
そしたら全部話すよ」
ザックは何か言いたげな様子だったが、頷いた。
「わかった」
相模を軽々と肩に担ぐと、二人は部屋から立ち去ったのだった。