2章・ゲームスタート③
紫苑の言葉に、相模は一瞬怯えたように肩をすくめたが、すぐにまっすぐ紫苑を見つめる。
そして紫苑の考えている事がわかったのか、小刻みに首を横に振った。
「------いけません。
その言葉だけは……」
【さぁ------言うのだ。
我等を、救ってくれ】
『声』が引き金となった。
紫苑は高らかに詠唱する。
『我、灯馬の血を引く者なり。大地の風、空の海よ、我が血に従え。
封じられし使徒を解き放たん。
我が言葉よ、真となれ!』
紫苑の体から、青白い閃光がほとばしった。
その閃光は雷のように部屋を駆け抜け、蜘蛛の巣状に拡散した。
その内の何本かが、天井に達し、白熱灯を割った。
明かりが半減し、部屋は薄暗くなる。
流れる閃光と降り注ぐ白熱灯の破片の中、紫苑は二十八本のパイプが次々と光り、一斉に消えたかと思えば、中にいたはずの人々の姿もなくなっていた。
「き、えた------」
その刹那、パイプがガラガラと倒れてきた。
紫苑に向かって------。
「えっ?」
「紫苑様------っ!!」
相模が走ってきて、紫苑を抱きすくめるように庇った。
ガッ!!と鈍い音がした。
「相模さん……?」
フッと紫苑の体に回されていた相模の腕が離れた。
長身の細い体が倒れていくのを紫苑はただ眺めることしかできなかった。
相模が床に倒れ込んだ瞬間、紫苑はハッと我にかえった。
相模の側にしゃがみ込む。
「------相模さん!相模さん!」
肩を掴んで揺さぶるが、反応はない。
見るとこめかみの辺りから、頬にかけて紅く艶やかな一筋の線が見え、美しい顎のラインに沿うように流れていった。
その紅いものが相模の頭部から流れ出している血だということに気づいた紫苑は、ハッと息を飲んだ。
更に激しく肩を揺さぶる。
「相模さんっ!!」
「そんなに揺さぶらない方がいいよ」
突然背後から聞こえた声に、紫苑は勢いよく振り返る。
そこにいたのは、予想外の人物だった。