2章・偶然と必然-異界の扉-②
赤煉瓦で造られた美しい校門。その先には白と赤の煉瓦がランダムに組み合わされた道がずっと続いている。
奥には校舎だろうか、校門と同じ色の赤煉瓦の建物が見える。
校門横の校名が刻まれた黒石には、金の塗料が塗られていた。
『私立海王高校』
相模の運転するリムジンは、学校の敷地内に平然と入っていく。
紫苑は驚いて相模に尋ねる。
「相模さん、入っちゃって大丈夫なの!?」
「ええ」
相模はにこやかに答えた。
「校門から生徒用玄関までは、約一キロございますから」
「い、一キロぉ!!?」
そう、忘れていた。
この私立海王高校、各界の富豪や社長の御曹司、令嬢が通う、超セレブな学校なのだ。
敷地面積は東京ドーム七個分と、学校にしては異常とも言える広さを誇っている。
学校内の施設は食堂、図書館、体育館、グラウンドなど普通の設備もあるが、馬を走らせる馬場や、各部活ごとの専用グラウンド、高級イタリアンのレストランに教会と一般の学校ではお目にかかれない施設も沢山あるのだ。
「はい、到着しました」
緑の木々が脇に植えられた道をしばらく走って、ようやく大きな建物が見えてきた。
ロータリーのようにカーブした道には、沢山の高級車が停まっている。
車を合計するだけで日本経済をひっくり返せるのではないかというほどの高級外車のオンパレードに、紫苑ははっきり理解した。
ここは、自分の知っている世界とは違うのだと------。
「では、私はここで」
車から降りて紫苑に鞄を手渡した相模は一礼した。
紫苑は不安げに相模を見る。
その視線に気づいたのか、相模はいつもより優しい笑顔になった。
「式が終わる頃にまたお迎えに上がりますので。
なにかありましたら、携帯の方に電話がメールをお願い致します」
「うん……」
「それでは」
再び綺麗に一礼すると、相模が乗ったリムジンは優雅にロータリーを曲がって元来た道を引き返していった。
取り残された紫苑は肩を落とす。
「とりあえず、クラス発表を見に行くか------」
校舎の左側に人が沢山集まっている箇所がある。
紫苑はそこへ向かった。
見上げるほど高い掲示板には、白い紙が貼られている。
紫苑は自分の名前を目で探した。
「一年……二組か」
全部で三クラスある内のまん中だ。
入学式の前に教室で対面があることを相模から聞いていた紫苑は、一年二組に向かった。