2章・偶然と必然-異界の扉-①
入学式の朝、天気は------。
「いやぁ、入学式日和ですね」
空は快晴。
そんな青空を仰ぎながら、相模が清々しい顔つきで微笑んだ。
「そうだね」
紫苑もリムジンの窓から空を眺めていた。
十分ほど前、馬車を門の前に移動させると言った相模を、紫苑は必死で止めた。
入学初日からあまり目立ちたくはなかったからだ。
相模は納得していないようだったが、玄関前に黒塗りのリムジンを回してきた。
走ること十分。
国道に出ると、やはり周囲の注目を少なからず浴びてしまう。
ガラスにはプライバシーを守るための黒いシートが貼られていて、あちらから紫苑の姿が見えないことが幸いだった。
「もう少しで学校に着きますよ」
「------うん」
声が一度喉で詰まり、こもったような声が出る。
相模がバックミラー越しに微笑みかけたのが見えた。
「紫苑様、もしかして……緊張なさってますか?」
「へっ!?」
「なさってますね」
ちょうど赤信号になった。
ハンドルから左手を離して口元に当てて笑う相模。
紫苑がムッとすると、信号が青に変わり、リムジンが緩やかに発進する。
「申し訳ございません。
ですが、大丈夫ですよ」
「------------?」
「紫苑様がお通いになる学校は普通ではございませんので」
「普通じゃない?それってどういう……」
「おっと、着きましたよ」
相模の言葉に、紫苑は言いかけた質問を飲み込んで、窓の外の景色に意識を集中した。