1章・同居人⑤
相模に付いて食堂に向かう時にわかったことだが、封使館には一合館・二号館・三号館が存在し、門から見えていた部分は一合館、その裏に渡り廊下で二階部分が繋がった二号館、三号館があるのだ。
食堂は、その二号館の二階にあった。
「どうぞ」
またもや相模が扉をサッと開けてくれる。
食堂の中に置かれた細長いテーブルには、三人の人物が座っていた。
一人目、扉に一番近い場所に座っている人物。
オレンジがかった茶色く短い髪に、輝く金色の瞳。
肌も少し小麦色に日焼けしていて、健康的な印象を与える。
チュニック------と言うのだろうか、カーキ色の服を着たその下には、たくましい筋肉がうかがえる。
二人目、扉から一番奥に座っている人物。
背中のまん中まで伸びたさらさらのまっすぐな銀の髪に、同色の瞳。
肌は雪のように白く透き通っている。
ほっそりとした美しい腕が、灰色を帯びたローブのような服からのぞいている。
三人目、テーブルのまん中付近に座った人物。
------それは、
「紫苑お兄ちゃん!」
パァッと顔を輝かせて紫苑に手を振るルナセルだった。
茶髪の青年がそれを聞いて、紫苑に向き直る。
「紫苑------?
そうか、お前が源一郎の言ってた奴か」
そこまで言うと青年は、ニコッと紫苑に笑いかけた。
まるで太陽のような陽気な笑顔だ。
「俺はザック。よろしくな」
「あ、よ、よろしく」
「そんなに堅くなるなよ。
ほら、アローディス、お前も挨拶くらいしとけよ」
ザックは銀髪の青年を振り返って言う。
アローディスと呼ばれた青年は、銀色の瞳で紫苑を見据えた。
「私は、アローディスだ。
お前が灯馬の血を引く者か?」
「へっ!?あ------はぁ……」
なんとも気のない返事に、アローディスはため息をつく。
相模がスッと紫苑の横に移動して、紫苑を席へと案内した。
ルナセルと向かい合う位置、ザックとアローディスのまん中に紫苑は座り、食事が始まった。
「お兄ちゃんはどんな食べ物が好き?」
「紫苑はどこから来たんだ?」
ルナセルとザックの質問攻めにあい、紫苑は食事の味もわからないほどに緊張して、夕食は終わった。