1章・同居人③
金糸で周りを縁取られた真紅の絨毯が一面に敷かれたエントランスホール。
その奥には新内閣が成立した時に並ぶ大階段のような階段があり、途中から二手に湾曲して分かれている。
頭上を見上げると、巨大なシャンデリアがあり、暖かな色味の光がホールを満たしている。
階段の踊場に飾られている絵画は、中世ヨーロッパ風のタッチで沢山の人が描かれている。
「紫苑様のお部屋にご案内致します」
紫苑は色んな物を見ようとして、キョロキョロしながら相模の後に続いた。
絨毯は足がぎりぎり沈み込まない程度にふかふかで、二人の足音を吸収するため、エントランスホールはとても静かだった。
紫苑の部屋と案内されたのは、三階にある階段を上がってすぐのそこそこ広い部屋だった。
シングルベッドに本棚、窓際に置かれた木製の机と椅子。
もともとは客用であったらしいその部屋には、トイレと風呂が完備されていた。
「では、夕食の際に参りますので、それまでごゆっくりなさって下さい」
ボストンバックを机の上に置くと、相模は丁寧に頭を下げて部屋を後にした。
一人取り残された部屋で、紫苑はとりあえずベッドに仰向けに寝転んだ。
家のベッドよりもふかふかで、体を包み込んでくれるその感覚に、紫苑は体を預けた。
目を閉じると、余程疲れていたのか、眠気がどっと襲ってきて紫苑は睡魔に逆らわず、そのまま眠りに落ちたのだった。