過去を振り返ってー②ー優希
過去を振り返ってー②ー優希
私が高校2年生になった4月にお母さんの再婚が決まった。
私は加藤優希になった。
家は、お父さんが残してくれたここをリフォームして使うという話でまとまっていた。
再婚に反対する理由なんてない。
相手がどんな人だろうと、お母さんが選んだ人なら私は受け入れるし、うまくやっていくように努力できる自信があったから。
やっとお母さんの負担が減らせる。
それだけを思っていた私は甘かったんだ。
相手の方には娘さんがいて、どうやら少々行動に問題のある子らしかった。
初めてお義父さんに会った日。
4人で食事をとるはずだったその日、そこに彼女、玲奈さんは来なかった。
新しくお義父さんとなる晴彦さんはただ、申し訳ない、とお母さんと私に頭を下げて謝るだけで、彼女が来ない理由を言うことはなかった。
これから家族になる義妹は、私より2つ年下で中学3年生になったばかりだった。
『お義父さん、玲奈さんはどこの中学校に通ってるの?』
私が晴彦さんに話を振ると、お義父さんと呼ばれたことがうれしかったのか、にこにこ笑いながら答えた。
『あぁ、あの子はね、ここから電車で2時間くらいの場所にある第三中学校に通ってるんだ。遠いし、優希ちゃんは知らないだろう?知らないと思うな、有名じゃないし‥』
お義父さんの言い方は、まるで私に知らないであって欲しいというように聞こえた。
良いのか悪いのか、私はその中学校を知っていた。
県内でワースト3に入るくらいに、荒れた評判の悪い中学校だったから。
第三中生を見かけたら絶対に近づかないようにと、中学生のときクラス担任から忠告されていたのを思い出した。
答えあぐねる私を見ていたお義父さんは、私がその中学校を知っていると分かったらしく小さくため息を吐くとそっと目を伏せた。
諦めたようにポツリポツリと娘について語りだしたお義父さんの表情からは、苦労や後悔、躊躇いといった感情が滲み出ていた。
前もって事情を聞いていたらしいお母さんは何も言わず、しっとりと語るお義父さんの横顔を見つめているだけだった。
彼女は幼い頃に母親の浮気が原因で離婚した家庭で育ってきたと言う。
母親の愛情を知らないばかりでなく少々行動に問題を抱えていた。
小学校5年生になると、家に帰らない日が続くようになったらしい。
夜中補導されることなど数え切れないほどあったそうだ。
万引きや喧嘩などは女の子であるにも関わらず巻き込まれてきたと。
娘を心配するがどう接して良いかわからない、離婚当時は自分のことで精一杯で娘を大切にしてやれなかった、思いやれなかった。
そう語るお義父さんを気の毒に思ったし、きっと優しい人なんだとも不器用な人なんだとも理解した。
お義父さんを肯定してあげたい気持ちもあったけど、私はそれ以上に幼いころから孤独に包まれて心細かっただろう娘さんを思って心が痛くなった。
でも思うのは簡単だけど、必ずしも行動と一致するとは思えなかった。
お義父さんから話を聞いた私は、本音を言うとそんな一般的に不良と言われるような女の子と仲良くできるはずがないと思った。
はっきり言って怖いし、優しくできないかもしれないと。
違いすぎる価値観は人と人との間に溝をつくるものだから。
だからって私が彼女を避けることはできないし、してはならないと自覚してた。
お母さんが私に期待してたから。
私なら彼女ともうまく付き合っていけるだろうと。
いつも笑って他人とすぐに打ち解けるところは優希の長所だね、とよく言ってくれてた。
それが努力して作られた私の性格だって、お母さんは気づいてないんだとその時改めて思わされた。
お義父さんからのどこかすがるような視線にも、お母さんからの期待にも、私はプレッシャーを感じていたしストレスにもなったけど。
誰にも頼らないって決めた私は彼にも相談せず自分の中で消化してしまおうと努力した。
初めて彼女に会ったときにはなんと言おうか?
どんな料理を作ろうか?
部屋をどうコーディネートしようか?
なんと呼ぼうか?
と。
心に傷を負う彼女との距離感、はとても大切になるから。
そうやって1人悩んだ私を裏切ったのは、他でもない玲奈。
彼女自身だった。
私の瞳に映った玲奈は、不良なんかじゃなかったから。
ただの傷ついた、人を警戒した、捨て猫のような目をした、綺麗な顔立ちの女の子だった。
練習した言葉も笑顔もすべて頭から飛んでしまった私の心には、彼女に普通の幸せを見つけてほしいと願う気持ちだけが沸き上がっていた。
読んでくださってありがとうございます!!
まだお話は動きませんが、できれば10月中に完結したいと思っています




