過去を振り返ってー①ー優希
過去を振り返ってー①ー優希
お父さんは私が小学校3年生の時に交通事故で突然亡くなってしまった。
子供の私から見ても夫婦仲はよかったと思うし、何よりお父さんは優しい人だった。
だから、大好きだった。
お父さんが亡くなって、お母さんはそれまで以上に働かなくてはいけなくなったし、私は一人で留守番することが増えた。
おばあちゃんちは県外にあるからそうそう会いに行くこともできないし、1人っ子だった私は必然的に家に帰ると1人きりになった。
幼いながらもお母さんの力になりたくて、できもしない料理を作ってみたり、洗い物をしてみたり、掃除をしてみたり。
お鍋は焦げるわお皿は割るわ。
掃除機は誤って階段から落とし壊してしまうわで。
余計な仕事を増やす私をお母さんは怒ったりしなかった。
ただありがとう、と笑って頭を撫でてくれた。
この時私は、当たり前が当たり前でなくなる苦しさを体験した。
当たり前にあったものが無くなると、もう以前の生活には戻れないと。
小学校も高学年になると、だんだん家事はこなせるようになったし、お父さんのいない生活、お母さんが遅くまで仕事で帰ってこない生活、家で1人の時間が長い生活に慣れた。
私には支えてくれる透がいてくれたから、やっていけたのかもしれない。
透との出会いは、正直覚えていない。
私のお母さんと透のお母さん、美佳さんの仲がよかったから、いつの間にか気づいたら私も透とよく遊ぶようになっていた。
2つ年上の透は、小さいころから美人だった。
羨ましいことに。
それにモテていた。
昼間学校から帰ると決まって透はうちに遊びに来てくれた。
美佳さんから渡されたお菓子を持って。
夕方になると少しだけ名残惜しそうに私の頭を撫でて、また明日ね、といって帰って行った。
透といると安心した。
透がいると寂しくなかった。
透のおかげで、私は変わらず笑っていられたんだと思う。
透のことが、本当に好きだった。
彼のおかげで生活の一部が欠けても私は私でいられた。
学校での友達とも仲良く関われたし、楽しく過ごせた。
親友と呼べるような友達もできていた。
時が流れ、私は中学生に進級し透は中学3年生になった。
その頃から彼との関わりは以前のようにはいかなくなった。
成長すればするほど、周りからの目を気にするようになったし、私は透に迷惑をかけたくなくなった。
もう甘えてばかりの私ではいられないと思った。
嫌われたく、ないから。
透は人を引き付ける魅力があったからいつも周りには友達がいた。
そんな透を私は私の友達と遠目に眺めるようになっていた。
その時、縮まることのない距離ができたことに、気づいてしまったんだ。
変わらず私を気にかけてくれた透から離れたのは他でもない私なのに。
その距離が辛くて、寂しくて、苦しかった。
透の隣で笑う、可愛い女の子に嫉妬してしまう醜い自分が嫌いだった。
それでも時間は止まってはくれなくて。
まだ子供な私を置いて、透はどんどん大人になっていく。
離れたところから見つめていた私に、彼は気づいていたのかもしれない。
定期的に連絡をしてくれる彼の優しさは、私をとても弱くした。
私はもう“透”と名前で呼べなくなってしまった。
彼は私だけのものじゃない。
縛り付けてはいけない。
彼には私なんかじゃつり合わない。
そう自分に言い聞かせるようになってから何年経ったか。
彼の好きなものを私も好きになりたくて始めた空手と水泳。
彼に褒めてもらいたくて始めたピアノ。
彼に教えてもらって出来るようになった苦手だった算数。
すべてが遠く、遠くに消えてしまうような感じがしてた。
思い出が過去の記憶となってしまう感覚は、私の心を冷たくしていく。
読んで下さる方に感謝です!!
このお話はフィクションですが、私が感じたことや友人を見つめていて思ったこと、考えたことを少しずつ取り入れています。




