第20話 告白
エルデ村に戻ったセフィナを、村人たちは盛大に迎えた。
「おかえり、セフィナちゃん!」
「待ってたぞ! 飯が恋しくてしょうがなかったんだ!」
「お姉ちゃんおかえりー!」
マーサに抱きしめられ、ボルスに背中を叩かれ、子どもたちに足にしがみつかれ、セフィナは泣きながら笑った。
「ただいま。……ただいま、みんな」
この一言が言える場所がある。
それだけで、胸がいっぱいだった。
ルカは村に残ることを決めた。冒険者ギルドの登録はAランクに昇格し、エルデ村を拠点にダンジョン攻略を続けるという。
「俺はもう、一人で戦わない。ここに帰る場所がある限り」
クロエも村に残った。密偵は正式に辞職し、エルデ村の「本物の行商人」として再出発する。商才は本物で、近隣の町との交易路を開拓し、村の経済を回し始めていた。
「密偵時代より稼げそうなんですよね。セフィナさんの料理という最強の名産品がありますし」
そして――ガレスもまた、エルデ村を訪れた。
騎士団の鎧ではなく、質素な旅装で。
「ガレスさん? どうしたんですか、その格好」
セフィナが目を丸くすると、ガレスは頭を掻いて照れ臭そうに笑った。
「騎士団、辞めてきた」
「ええっ!?」
「副団長の後任はもう決まっている。俺がいなくても、騎士団は回る。……それよりも」
ガレスは、セフィナの目を真っ直ぐに見た。
「セフィナさん。俺は、あの日王宮の門であなたを見送った時から、ずっと後悔していた。もっと早くあなたのそばにいればよかった。もっと早く、あなたを守ればよかった」
「ガレスさん……」
「遅すぎるかもしれない。でも、言わせてほしい」
ガレスは、不器用に言葉を紡いだ。
「あなたの傍にいたい。騎士としてじゃなく、俺自身として。あなたの料理を、一番近くで食べる人間でいたい。……あなたを、守らせてほしい」
春風が丘を撫でた。
遠くで子どもたちの笑い声が聞こえる。
セフィナの目に涙が浮かんだ。でも、それは幸せの涙だった。
「ガレスさん、私の料理、量多いですよ?」
「全部食べる」
「朝も昼も夜も作りますよ?」
「全部食べる」
「味見を頼むこともありますよ? 何回も」
「何回でも食べる」
セフィナは、声を出して笑った。
「……じゃあ、お願いします。たくさん食べてくださいね」
それが、セフィナなりの答えだった。




