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追放された聖女の辺境ごはん ~私の料理を食べた人がなぜか最強になるんですが~  作者: 月代
【第四章 聖女の選択】

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18/21

第18話 帰る場所


王都の危機は去った。


 セレスティナの新しい結界は安定し、魔物の侵入は完全に止まった。市街地の復興が始まり、避難していた市民たちも少しずつ日常を取り戻していく。


 セフィナは滞在中も休むことなく料理を作り続けた。復興作業に携わる人々に食事を届け、病院では患者に粥を作り、孤児院では子どもたちにクッキーを焼いた。


「セフィナ様、どうかこのまま王都にお残りください」


 ヴァレリウスが頭を下げた。あの傲慢な神殿長が、深々と。


「あなたの力は、この国に不可欠です。聖女の地位を回復し、相応の待遇を――」


「神殿長様」


 セフィナは静かに首を振った。


「私には帰る場所があるんです」


 エルデ村。

 マーサの笑顔。ボルスの豪快な声。子どもたちの歓声。

 あの小さな村の、あの小さな竈が、セフィナの居場所だ。


「セレスティナさんがいれば、大丈夫です。あの子は強い。私なんかよりずっと」


「しかし……」


「それに、私が残ったらセレスティナさんが遠慮してしまうでしょう? あの子には、自分の力で、自分の道を歩いてほしいんです」


 ヴァレリウスは何も言えなかった。

 十五年間この女性の力を過小評価し、追放に賛同した自分に、引き止める資格などない。


「……申し訳ありませんでした」


「謝らなくていいですよ、神殿長様。おかげで私、自分の本当にやりたいことが見つかりましたから」


 出発の朝。

 神殿の門前に、セレスティナが待っていた。


「セフィナ様」


「セフィナ『さん』ですよ」


「……セフィナさん」


 セレスティナは深く頭を下げた。


「ありがとうございました。あなたがいなければ、私は……」


「セレスティナさん。一つ、お願いがあります」


「何でしょう」


「たまには休んでくださいね。毎日毎日祈り続けなくていいんです。結界は、あなたが元気でいることが一番の支えになりますから」


 セレスティナの目が潤んだ。


「それと、もう一つ。料理、覚えてみませんか?」


「え?」


「自分のために何かを作るって、すごくいいことなんですよ。疲れた時に温かいスープを作って飲むとか。甘いものが食べたい時にクッキーを焼くとか。……聖女である前に、一人の女の子なんですから」


 セレスティナの目から、大粒の涙がぽろぽろと落ちた。


「は、はい……覚えます。料理、覚えます……!」


「えらい。じゃあ、これ」


 セフィナは一冊のレシピ帳を差し出した。セフィナが手書きで書き起こした、初心者向けの簡単レシピ集だ。


「私のレシピの中から、簡単なものを選んで書いておきました。まずはスープから始めるといいですよ」


 セレスティナはレシピ帳を胸に抱きしめた。


「セフィナさん。……いつか、エルデ村に遊びに行ってもいいですか」


「もちろん。いつでも来てください。最高のごはんを作って待ってます」


 二人の聖女は、笑顔で抱き合った。



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