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追放された聖女の辺境ごはん ~私の料理を食べた人がなぜか最強になるんですが~  作者: 月代
【第三章 王国の危機】

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第14話 出発


翌朝。


 セフィナが王都に向かうことは、あっという間に村中に伝わった。


「セフィナちゃんが行くって言うなら、止めないよ」


 マーサは、大きな荷袋にいっぱいの食材を詰めながら言った。


「でも、ちゃんと帰ってきなよ。ここがあんたの家なんだから」


「もちろん。必ず帰ってきます」


「俺も行く」


 ルカが、魔剣を腰に佩いて現れた。


「Bランクダンジョンのボスを一人で倒せる男が護衛につけば、まあ安心だろう」


「ルカさん……」


「借りを返すだけだ。あんたの飯がなければ、俺は今でもCランクのまま燻っていた」


 クロエも歩み出た。

 いつもの行商人の服ではなく、黒い軽装に着替えている。神殿密偵の正装だ。


「私も同行します。王都の内部事情は私が一番わかっています。……それに、嘘の報告書を出した落とし前もつけないといけませんし」


「クロエさん……大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃないかもしれませんけど」


 クロエは肩をすくめて笑った。


「セフィナさんのごはんを食べてから、怖いものがなくなっちゃったんですよね」


 村人たちが、広場に集まってきた。


「セフィナさん、これ持ってけ! うちの芋、最高にでかいやつ!」

「水筒に搾りたての山羊乳入れといたよ!」

「お姉ちゃん、がんばってね!」


 子どもたちが足にしがみつき、老人たちが手を振り、ボルスが豪快に背中を叩いた。


「行ってこい、セフィナさん! あんたの飯で王都を救ってやれ!」


 セフィナの目に涙が浮かんだが、ぐっとこらえて笑った。


「行ってきます。……帰ったら、みんなの大好物を全部作りますからね」


「おお! 約束だぞ!」


 セフィナ、ルカ、クロエ。そしてガレスと騎士五人。

 一行は馬車に乗り、エルデ村を後にした。


 セフィナは馬車の荷台で、さっそく携帯用の保存食を仕込み始めた。干し肉の燻製。硬焼きパン。チーズと香草のクラッカー。

 道中の食事はもちろん、王都に着いてからのことも考えなければならない。


「セフィナさん、馬車の中で料理するんですか」


 ルカが呆れたように言った。


「だって、王都についてすぐ動けるように準備しないと。疲れた人たちにまず温かいものを食べてもらいたいし」


「……相変わらずだな」


「それと、セレスティナさんには特別なものを作りたいんです。魔力枯渇で倒れたなら、魔力回復に効果のある食材を組み合わせて……」


 セフィナはレシピ帳をめくりながら、真剣な表情で考え込んだ。


 【神の祝福】は、セフィナ自身にはまだ自覚がない。

 だが、十五年間の聖女としての経験と、料理人としての直感が、最適な答えを導き出そうとしていた。


「ルカさん、途中の山で薬草を採取してもいいですか? 銀月草と、星露茸があれば最高なんですけど」


「銀月草は高地の岩場に自生する。星露茸は湿った洞窟だな。……まあ、寄り道くらいはできるだろう」


「ありがとうございます!」


 ガレスが馬上から振り返り、馬車の中で楽しそうに食材を吟味するセフィナを見て、小さく笑った。


 この人は、どこにいても変わらない。

 誰かのために何かを作る。それが、この人の在り方だ。


 王都まで、あと三日。


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