人さらいの最後の誓い
王都城門前、朝の光が石畳を冷たく照らしていた。
スタンリーはリナを背後に庇い、国王と真正面から対峙していた。
周囲を王国軍が固く取り囲み、第一王子と第二王子が玉座から冷たい視線を注いでいる。
国王の化け物は、玉座の上で笑っていた。
赤い目が輝き、牙のような歯が覗く。
口の端には、まだ生け贄の血が乾いていた。
「永遠の命」を得るために、人を食らう怪物。
第一王子が嘲る。
「人さらいのスタンリー。
怪物が王都へ戻るとは、愚かだな。
一人の娘のために、すべてを捨てるか?」
第二王子が残忍な笑みを浮かべる。
「異母弟よ。
お前は最初から、用済みだった。」
スタンリーの目が、静かに燃えていた。
記憶は完全に蘇っていた。
すべてを。
彼はゆっくりと前に出た。
短剣を握る手が、微かに震える。
「国王陛下。
第一王子、第二王子。
俺はすべて思い出した。
俺は人さらいのスタンリーだ。
王国の闇で、何十人も娘をさらった怪物。
血と罪を背負い、生きてきた。」
広場がざわめく。
スタンリーは振り返り、リナの手を強く握った。
彼女の瞳に、すべてを映す。
「だがな……
たった一人の妹だけが、俺の生きる意味だった。
リナだけを守るために、俺は怪物として生き、
怪物としてここに立っている。」
タイトル回収の瞬間。
国王が笑い声を上げ、爪を伸ばした。
「愚かな弟よ。食わせろ!」
戦いが始まった。
スタンリーの剣が、記憶を失っていた間も守り続けた想いを乗せて舞う。
王国軍を次々と倒し、国王の化け物に迫る。
国王の爪がスタンリーの肩を裂く。
血が噴き出す。
第一王子と第二王子が剣を抜き、異母兄弟の争いを楽しむように襲いかかる。
スタンリーは歯を食いしばり、叫んだ。
「たった一人の妹の為に。
それだけが、俺の答えだ。
人さらいのスタンリーとして、最後に——守る!」
剣が交錯する。
カイルとグリムが森から駆けつけ、スタンリーの援護に入った。
カイル「俺も戦う! お前を許せないが……リナを守るためだ!」
グリム「俺も! ゴブリンでも、友達を守るぞ!」
激しい戦いの末、スタンリーの短剣が国王の胸を貫いた。
化け物の咆哮が、王都に響き渡る。
国王の体が崩れ落ちる。
第一王子と第二王子は、恐怖に顔を歪め、逃げようとしたが、スタンリーの剣がそれを許さなかった。
スタンリーは傷だらけで、リナを抱き寄せた。
「これで……お前は自由だ。」
リナが泣きながら、彼にしがみつく。
「一緒に生きましょう。
異母兄妹として……最後まで。」
群衆の視線が変わる。
罵声は消え、静かな驚きだけが残った。
人さらいのスタンリーは、最後に——人間として、立っていた。
二人は、広場を後にした。
カイルとグリムが後を追う。
森の村へ、静かに歩いていく。
たった一人の妹だけが、スタンリーの生きる意味だった。
そして、それは永遠に変わらない。




