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永遠の始まり

森の奥、廃村は再び静かだった。

リナ(12歳)は暖炉の前で、膝を抱えて座っていた。

兄さま——スタンリーおじさまの傷は、もうほとんど癒えていた。

32歳の体は、戦いの後遺症で少し動きが鈍くなっていたが、それでも優しくリナの頭を撫でてくれる。

「おじさん……あの処刑の時、私は本当に死ぬと思ったよ。」

リナの声は小さかった。

スタンリーは静かに頷いた。

「あの雨の朝……

 俺は死んだはずだった。

 首が折れ、体がだらんと垂れ下がった瞬間、すべてが終わったと思った。

 でも、それは終わりじゃなかった。

 死が、俺を過去へ連れ戻した。

 記憶を失った俺が、村でお前と出会うための……始まりだったんだ。」

リナは兄さまの胸に顔を埋めた。

異母兄妹であることを、彼女だけが知っている秘密。

今はもう、隠す必要がない。

「私、ずっと知ってた。

 おじさまが私の異母兄だって。

 母親が違う、秘密の兄妹。

 王国の血を引く、禁断の関係。

 でも、おじさまは私を娘のように、妹のように守ってくれた。

 それが、私のすべてだった。」

スタンリーはリナを抱きしめた。

強く、温かく。

「俺は人さらいのスタンリーだった。

 国王の化け物に命じられ、何十人も娘をさらった怪物。

 血と罪を背負い、生きてきた。

 だが……

たった一人の妹だけが、俺の生きる意味だった。

お前だけを守るために、俺は死から戻り、怪物として戦い、

怪物として守り抜いた。」

外では、カイル(15歳)とグリム(ゴブリンの少年)が薪を運んでいた。

カイルが笑いながら言った。

「もう大丈夫だ。

 王国軍は国王の死で混乱してる。

 第一王子と第二王子も、互いに争ってて手が回らないらしい。」

グリムが尻尾を振りながら叫んだ。

「俺、村を守るぞ!

 ゴブリンでも、友達を守るんだ!」

暖炉の火が、パチパチと音を立てる。

スタンリーはリナの髪を撫でながら、静かに呟いた。

「あの処刑台で死んだ俺は、

 過去の俺に繋がった。

 記憶を失った俺が、お前と出会うために。

 すべては、お前を守るための輪廻だったのかもしれない。」

リナは微笑んだ。

「これからは、普通に生きましょう。

 兄さまと、妹として。

 おじさまと、娘として。」

村の朝は、穏やかに訪れる。

人さらいのスタンリーは、もういない。

ただ、たった一人の妹と生きる男が、そこにいた。

そして、それは永遠に変わらない。

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