処刑の雨
私は12歳の少女、リナ。
スタンリー王国の辺境の小さな村で生まれ育った。
この王国は、昔から暗い国だった。
北の山脈に囲まれ、霧がいつも立ち込め、太陽がまともに顔を出す日は少ない。
人々は「王の恵み」と呼ばれる重い税を払い続け、王族に逆らう者は夜のうちに消える。
王都の噂はいつも恐ろしいものばかり——国王陛下は人間の姿をした化け物で、若い娘の血と肉を食べて永遠の命を保っているという。
第一王子は母親が貴族の娘で、冷酷で計算高い人。第二王子は母親が平民出身で、野心が強く残忍だ。
二人とも異母兄弟で、いつも王位を狙って陰で争っている。
でも、私にとって一番大切だったのは、第三王子のスタンリーおじさまだった。
スタンリーおじさまは32歳。
みんなが「人さらいのスタンリー」と呼ぶ、冷たい悪人。
国王の命令で、何十人も娘をさらってきた人。
村を襲い、泣く娘を無理やり連れ去り、王城に届ける。
誰も彼を好きじゃない。
怖がるか、憎むか。
私も最初は怖かった。
でも、あの夜——国王が私を「生け贄」に選んだ夜——おじさまは私を連れて森へ逃げてくれた。
「国王に食わせるためじゃない。お前を、守るためだ」
そう言って、私の手を強く握った。
それから、私たちは隠れて暮らした。
おじさまは他の人には笑顔を見せず、目が死んでいた。
冷徹で、残酷で、罪を顧みない悪人だった。
でも、私にだけは違った。
父親のように、または兄のように、頭を撫でてくれた。
夜、怖い夢を見ると、そばにいてくれた。
「リナ、お前は俺の大切な妹だ」
そう言ってくれた。
私は知っていた。
私とスタンリーおじさまは、異母兄妹だということを。
母親が違う。
国王の血を引く、秘密の兄妹。
おじさまはそれを知らないふりをしていたけど、私は気づいていた。
だからこそ、おじさまの優しさが、特別に感じた。
なのに——
今、私は王都中央広場の群衆の中に立っている。
雨が降っている。
冷たい雨粒が頰を伝い、薄い服を重くする。
周りの人たちは皆、興奮した目で処刑台を見上げている。
「怪物が死ぬぞ!」「人さらいの末路だ!」という罵声が、雨音に混じって響く。
処刑台の上に、スタンリーおじさまが立っている。
首に荒縄をかけられ、両手を後ろで固く縛られている。
雨に濡れた黒い髪が、額に張り付いている。
表情はいつものように冷たい。
32歳の体は傷だらけで、悪人として生きてきた証だった。
高い玉座では、第一王子と第二王子が並んで座っている。
第一王子(母親が貴族出身)は、冷たい微笑みを浮かべ、弟の死を楽しむように見下ろしている。
第二王子(母親が平民出身)は、興奮した目で、兄とは違う残忍な笑みを浮かべている。
異母兄弟の二人は、いつも王位を争い、第三王子を「用済みの犬」として見下していた。
そして、玉座の中央に——国王陛下。
国王は笑っていた。
その口の端に、乾いた血の跡がある。
今日の生け贄として連れてこられた若い娘を、さっき玉座の間で食べ終えたばかりだ。
化け物の目が、赤く光っている。
人間の姿をしているのに、牙のような歯が覗き、指は爪が長く尖っている。
国王は「永遠の命」を得るために、人を食べる。
若い娘の血と肉が、一番好きだと言われている。
だから、王国中から「美しい娘」が集められる。
私は群衆の中で、必死に涙を堪えていた。
おじさま……兄さま……。
おじさまの目が、群衆の中の私を見つけた。
一瞬だけ、冷たい目が柔らかくなった。
まるで「大丈夫だ、リナ。泣くな」と言うように。
執行人が縄を引く。
おじさまの体が、びくんと跳ねた。
首が折れる音が、雨音に紛れて聞こえた気がした。
体がだらんと垂れ下がる。
死んだ。
スタンリーおじさまは、明確に、死んだ。
群衆が歓声を上げる。
第一王子と第二王子が笑う。
国王が、満足そうに舌なめずりをする。
私は雨の中で、膝をついた。
おじさま……。
でも、なぜか——
心のどこかで、声が聞こえた気がした。
「これは、終わりじゃない。
始まりだ。」
雨が、ますます強くなった。




