モデル補足
本研究で用いたモデルは、数式化およびシミュレーション化が可能であるが、本稿ではこれらを行っていない。これは、予測精度の向上や定量的な最適解の提示を目的とせず、極限環境における経済活動の挙動がどこまで記述可能であるかを示すことに主眼を置いたためである。
本研究の枠組みに基づけば、以下のような条件設定を導入した拡張モデルを構成することができる。
・人口を固定した場合
・人口変動を導入した場合
・生産量の時間変動を導入した場合
・生産効率の個体差を導入した場合
・Metabolic Ledger(ML)の記録遅延を仮定した場合
・ML の部分的障害または恒常的障害を仮定した場合
・予測モデルの誤差分布を明示的に導入した場合
これらはいずれも、計算可能性や予測精度を高めることを目的とした拡張であり、技術的には実装可能である。しかし、これらの条件を導入した場合に得られる結果は、本論で示した結論を弱めるものではなく、むしろ同じ帰結をより早く、より明確に導く方向にのみ作用する。
したがって本稿では、これらの展開を行わない。詳細なモデル化や数値実験を追加することは、結論の妥当性を高める一方で、本研究の目的である「経済活動がどのような条件で記述不能に至るか」という問いに対して、新たな知見を与えないと判断したためである。
本付録は、モデルの未完成を示すものではなく、記述をこれ以上進めないという選択そのものが、本研究の射程を規定していることを明示するために付されている。




