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7.2 効率抑制型社会の特徴

本節では、前節で示した低密度・低誤差条件を意図的に維持するための社会的選択として、効率抑制型社会の特徴を整理する。ここでいう効率抑制とは、生産性や生存効率係数の最大化を目標としないという意味であり、非合理や停滞を肯定する態度を指すものではない。むしろ、最適化がもたらす不安定性を避けるための合理的な抑制である。


効率抑制型社会において顕著なのは、改善余地が存在していても、それを即座に埋めないという判断が制度的に許容されている点である。生存効率係数が上昇し得る選択肢が存在したとしても、その導入は段階的に行われ、あるいは意図的に見送られる。この判断は、短期的な生存条件の改善よりも、予測誤差の拡大や依存構造の固定化を回避することを優先した結果である。


この社会構造では、効率の高い行為が常に推奨されるわけではない。むしろ、効率が高すぎる行為は、全体のバランスを崩す潜在的要因として警戒される。特定の生産手段や技術が突出した場合、それに依存することで、障害発生時の影響が拡大するためである。効率抑制は、このような単一解への収束を避けるための分散戦略として機能する。


また、効率抑制型社会では、評価の更新頻度が低く保たれる傾向がある。ML に蓄積された記録は参照されるが、その解釈が即時に行動へ反映されることは少ない。評価と行動の間に時間差を設けることで、偶発的な変動や一時的な成功が過剰に増幅されるのを防ぐ。この遅延は非効率に見えるが、結果として調整の余地を確保する役割を果たす。


重要なのは、効率抑制が道徳的規範として強制されない点である。個体は効率的な行為を選択する自由を持つが、その選択が直ちに全体の標準となることはない。制度は、最適解を提示するのではなく、極端な選択が連鎖しないような緩衝構造を提供するに留まる。


このような社会では、進歩は遅く、変化は目立たない。しかし、その停滞は脆弱性の裏返しではない。むしろ、変化の速度を制御することで、制度は回収不能・代替不能の境界から距離を保ち続ける。効率抑制型社会とは、最適化を拒否することで持続性を獲得する成立パターンとして理解される。


次節では、この抑制構造の中で見落とされがちな、非直接的な寄与行為がどのように再評価されるかを検討する。

【参考文献】

ロバート・アクセルロッド『つきあい方の科学』(ベーシック・ブックス、1984)

サミュエル・E・スティグマン『市場はなぜ自壊するのか――合理性と制度疲労』(ノートン・オービタル社、2190)

エリック・ラルソン『寓話集――みんなが得しようとして、誰も得しなかった話』(アンダーサイド・ブックス、2171)

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