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閏述|極限環境における経済活動の終端シナリオについて  作者: 八角泰三
第6章 回収不能・代替不能時の挙動
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6.2 制度的経済の解体過程

前節で述べた観測不能および調整不能の状態は、制度的経済が突発的に崩壊することを意味しない。むしろ、それは制度がなお形式上は維持されているにもかかわらず、内部から徐々に解体されていく過程の起点である。本節では、この解体がどのような段階を経て進行するかを記述する。


制度的経済の解体は、記録体系の停止によって始まるわけではない。ML は引き続き存在し、個体も制度上は登録されたままである。しかし、前節で示したように、意味のある操作が発生しなくなった個体に対して、ML は単に残高の減少、あるいは変化の停止を記録するのみとなる。この段階では、制度はまだ完全に機能しているが、その機能は空転している。


解体過程の第一段階は、交換可能性の消失である。生産能力を失い、貯蔵も尽きた個体は、他者との交換に参加できなくなる。ここで重要なのは、交換から排除されるのではなく、交換という行為自体が当該個体に対して成立しなくなる点である。市場は存在していても、当該個体にとっては不可視のものとなる。


第二段階は、扶養関係の限界化である。制度的には扶養や再配分の仕組みが存在していたとしても、それらは有限の余剰に依存する。集団全体の生産余力が低下する中で、扶養は次第に選択的となり、やがて維持できなくなる。ここで生じるのは、倫理的判断の変化ではなく、制度が前提としていた余剰条件の消失である。


第三段階において、制度は当該個体を経済主体として扱うことを停止する。これは明示的な排除や削除ではなく、制度的操作が一切適用されなくなるという形で起こる。ML 上では、当該個体は依然として存在するが、もはや取引や配分の単位として参照されることはない。この状態は、制度的な意味での「解体」であり、物理的な消失とは異なる。


この解体過程において特徴的なのは、いかなる決定点も存在しないことである。制度は「解体する」と決定することも、「回収する」と宣言することもない。すべては、操作の不成立が連続することで、結果的に生じる。したがって、この過程は外部からは緩慢で不可視なものとして観測されやすい。


制度的経済の解体は、制度そのものの失敗を意味しない。むしろ、それは制度が適用範囲を越えた事象に対して、無理な拡張や例外処理を行わなかった結果である。本研究の立場では、この解体は避けるべき異常ではなく、制度的経済が持つ有限性の自然な表出として位置づけられる。


次節では、この解体の帰結として、経済主体の単位がどのように縮小し、生存の記述がどのレベルまで還元されるかを検討する。

【参考文献】

エリオット・R・バーンズ『ゆっくり終わる制度――解体は宣言されない』(グレイホライゾンプレス、2178)

佐久間 俊宏『誰も決めていない結末』(綴社、2183)

匿名『制度は殺さない――ただ名前を消すだけ』(私家版、2159)

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