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5.2 企業(生産者)準政府モデル

本節では、カロリー基準の経済活動を、企業(生産者)が準政府的な役割を担う形で実装するモデルについて検討する。このモデルにおいて企業は、単なる私的生産主体ではなく、特定の生存資源や生産工程を継続的に供給することで、事実上の制度的影響力を持つ存在として機能する。


企業準政府モデルの特徴は、生産と配分が市場行為として行われる一方で、その結果が生存条件に直結する点にある。食料合成、酸素循環、医療素材、エネルギー変換といった分野において、特定の企業が生産を担う場合、その活動は ML 上のカロリー流通を通じて集団全体に影響を及ぼす。このとき、企業は通貨を発行しないが、生存に必要なカロリー流入の経路を実質的に制御する主体となる。


このモデルでは、企業の行為は市場原理に基づいて評価される。生産効率の向上、技術革新、減衰の抑制といった要素は、生存効率係数の改善として反映され、結果として取引選好に影響を与える。価格は依然として存在するが、その意味は利益最大化よりも、生存への寄与を媒介として形成される。


安定性の面では、企業準政府モデルは柔軟性に優れる。複数の生産者が競合する場合、単一障害点は分散され、政府発行型モデルに比べて調整速度が高い。一方で、この柔軟性は不均衡を生みやすい。生存効率係数の高い分野に生産資源が集中すると、他の領域が相対的に軽視される可能性がある。


また、企業が準政府的役割を担う場合、責任と権限の境界が不明瞭になりやすい。生産停止や品質低下が生じた際、それが市場の失敗なのか、制度運営の失敗なのかを切り分けることは難しい。ML 上では取引が正常に記録されていたとしても、生産者の判断が集団の生存条件を左右する状況が生まれる。


このモデルでは、減衰と不可逆性が企業の内部に取り込まれる。設備更新、在庫管理、工程効率といった問題は、企業の意思決定として処理され、その結果のみが ML 上に現れる。この点において、企業準政府モデルは、減衰を可視化しやすい一方で、その負担を特定主体に集中させる。


以上のように、企業(生産者)準政府モデルは、政府発行型モデルの基盤の上に、選択と競争を部分的に導入する構成として機能する。しかしその安定性は、企業の継続性と透明性に強く依存する。本研究の枠組みにおいて、本モデルは単独で完結する制度ではなく、政府発行型モデルとの役割分担、あるいは次節で述べる分散型モデルとの併存を前提とする中間的形態として位置づけられる。

【参考文献】

サミュエル・K・ブロナー『企業が国家になるとき――インフラ独占と準政府化の条件』(パララックス出版、2183)

エヴァン・ノース『企業国家クロノス社年代記③』(ネビュラSF文庫、2181)

オービタル・レビュー編集部『あなたの上司は誰か?――ハビタットにおける実質的統治者ランキング』(オービタル・レビュー、2192年11月号)

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