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閏述|極限環境における経済活動の終端シナリオについて  作者: 八角泰三
第3章 カロリー基準による経済活動の再記述
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3.3 貯蔵・交換・吸収の等価性

本節では、前節までに整理した記録操作を踏まえ、貯蔵・交換・吸収という異なる行為が、Metabolic Ledger(ML)上ではどのような意味で等価に扱われ得るかを検討する。ここでいう等価性とは、生理的・社会的・倫理的な同一性を意味するものではなく、記述上および記録上の等価性を指す。


ML において、カロリーは一貫して数量として記録される。CR による増加、DR および AS による減少は、いずれも同一の尺度で表現され、時間順に台帳へ反映される。このとき、貯蔵は残高の維持として、交換は他者への移転として、吸収は個体内部への取り込みとして区別されるが、記録上はいずれも残高の変化としてのみ現れる。


この構造において重要なのは、行為の差異が消去されている点ではない。むしろ、行為の差異は記録の外部に保持されたまま、結果のみが並列化されている。貯蔵は将来の利用可能性を高め、交換は社会的関係を変化させ、吸収は生理的状態を不可逆的に更新する。これらの意味内容は互いに代替不可能である。しかし、ML はそれらを評価せず、区別せず、ただ結果としてのカロリー量を記録する。


このとき成立する等価性は、次のように表現できる。すなわち、貯蔵されているカロリー、他者へ移転されたカロリー、個体に吸収されたカロリーは、いずれも「利用可能であったカロリー」という同一の事実に基づいて記録される。ML においては、利用可能性の消失が共通の終点となるため、消失に至る経路の違いは記録上の本質ではない。


この等価性は、価値の同一化を意味しない。交換されたカロリーが社会的価値を生み、吸収されたカロリーが生理的維持に寄与し、貯蔵されたカロリーが将来の選択肢を拡張するという差異は、依然として存在する。本研究が示すのは、それらの差異を否定することではなく、差異が存在したままでも、同一の参照軸で並行的に記述できるという点である。


等価性が成立する条件は、測定・記録・比較が可能であることである。カロリーが数量として確定し、ML によって時間的に整合した形で管理される限り、貯蔵・交換・吸収は、いずれも同一の台帳上で扱われる操作となる。この条件下では、どの行為が選択されたかは、記録の外部に委ねられる。


以上の整理から、本研究における等価性は、制度設計や行為選択を拘束するものではない。それは、経済活動を再記述するための便宜的な性質であり、既存の行為を同一の物理量に写像するための操作上の帰結に過ぎない。ML が提供するのは、価値判断の代替ではなく、判断を行うための共通の記述面である。


次章では、この等価性が個体間および集団レベルでどのような分析可能性を開くかを検討し、カロリー基準による再記述が、どの範囲まで既存の経済活動を可視化し得るかを示す。

【参考文献】

ナオミ・ルーカス『測られる身体、交換される生』(インターフェイス思想叢書、2179)

全糧保険組合 編『Metabolic Ledger 活用による被保険者健康維持の実践報告』(全糧保険組合調査資料、2193)

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