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映画評論  作者: 未世遙輝
9/25

映画 『天気の子』③啓介と夏美

フェルン(濡れた机にそっと手を置き)

……ここ、かつて編集部だった場所みたいです。須賀啓介と夏美――あの二人がいた。


ひとり(カバンからノートを取り出して)

あ……あの人たち……帆高くんを、いちばん近くで見てた……大人……だよね……。

夏美さんは……自由そうで、でも、就活がうまくいってなくて……なんか、わたし、すごく……わかる気がして……


千里(壁に背を預けたまま、低く)

夏美は“間にいた”。

大人と子供、現実と理想、正義と犯罪の境界線。そのど真ん中。

彼女は“手を汚す”覚悟をもって、帆高を逃した。

それって、相当な選択。


フリーレン(天井を見ながら)

でも、それでも彼女は“救われた”んだと思うよ。

就活で自分の過去を語ったってエピローグが、あたし、好きだったな。

「やってきたことに意味があったかもしれない」って顔してた。


シュタルク(椅子をひっくり返して座る)

でもさ、啓介のほうは……けっこうキツくねえか?

あんとき、帆高止めようとしてたじゃん。警察に渡そうとしてたし。

そっから最後の最後に、守るほうに回ったけど……遅くね?


フェルン(やや強めに)

それが“大人”ってことなのよ。

躊躇も、後悔も、何度も選び直す時間も含めて、大人は“間違える自由”がある。

須賀圭介の選択は、あれが彼なりの“取り返し”だった。


千里(頷く)

娘を失いかけた男が、再び他人の子どもを守った。

それは彼自身の失敗と、過去への贖罪だったのかもね。


ひとり(静かに)

贖罪……

でも……それって、すごく、苦しいと思う……

「ごめんね」って言っても……戻らないもの、あるから……。


フリーレン(柔らかく)

だからこそ、あの保釈のシーンには“願い”があった。

帆高を外に出すことで、須賀自身も“もう一度生きる”ことを選んだんだよ。


シュタルク(納得いかない様子で)

でもよ、夏美のほうは“最初から行動してた”じゃん。

あれ、カッケーよな。逃げないで、車出して、警察からも睨まれて。

ああいうのって、……正直、惚れるよな。


ひとり(真っ赤になって)

う……うん……そ、それは……たしかに……かっこよかった……


千里(少しだけ笑う)

彼女は、見てたんだよ。“帆高の真剣さ”と、“陽菜の運命”を。

で、“それに応える自分”になろうとした。

自分の人生に、意味を持たせたかったんじゃない?


フェルン(鋭く)

そう。“意味を問う”って、若者がやることだと思われがちだけど、

ほんとは――“意味を見失った大人”こそが、最も求めてるのかもしれない。


フリーレン(小さく目を閉じて)

――世界は最初から狂ってる。

でも、その中でも“誰かの真剣”を見たとき、人はもう一度動き出せる。

たとえ、それが罪であっても、ね。



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