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映画評論  作者: 未世遙輝
8/27

映画 『天気の子』②「世界は最初から狂っている」

シュタルク(雨に濡れながら、瓦礫に座って)

なあ……帆高が言ってたやつ……「世界は最初から狂ってた」ってやつ。

あれ、どういう意味なんだと思う?


フリーレン(手のひらに雨粒を受けて)

そのままだよ。

“正しいはずの世界”が、最初から“間違った前提”で組み立てられてるってこと。

たとえば――「晴れは良いこと」「雨は悪いこと」って、誰が決めた?


ひとり(フードを深くかぶりながら)

……あの……でも、学校とか、会社とか、止まっちゃって……

東京が水に沈むのって、“大変”……って、普通は思うんじゃ……?


千里(低く、端的に)

普通、の定義がもう壊れてる。

“正義”とか“秩序”って、誰の都合で作られてるか考えたことある?

陽菜一人の命と、天気と、社会。その取引を当然とする構造が、すでに狂ってる。


フェルン(静かにうなずく)

“誰かが消えることで他の誰かが救われる”……

それを正当化するのが、私たちの“社会”。

だけどその論理は、陽菜には通用しなかった。帆高には許せなかった。


シュタルク(火の消えかけたライターを擦りながら)

……でもよ、みんな、それで助かってたんじゃねーの?

雨が止んで、街が元通りになって、普通の生活が戻るんだったら……

誰かが犠牲になるのって、“必要なこと”じゃねえのか?


フリーレン(わずかに笑って)

あんた、素直でいいね。

でも、“誰か”って誰のこと? 自分じゃないからって、納得する?

もしシュタルク、お前の大事な人が“犠牲になる番”だったら、どう思う?


シュタルク(沈黙。しばらくして)

……ぶん殴る、全部。


ひとり(ふと顔を上げて)

帆高くん……そうしたんだよね。

あの雲の上で、世界じゃなくて、陽菜さんを選んだ……

それって……悪いことだったのかな……?


千里(一拍おいて)

“悪い”じゃない。“許されない”が正しい。

でも、“許されない”からこそ、“それでも”って言える人間が必要。

社会のために人が消える世界は、たしかに“狂ってる”。


フェルン(真剣な目で)

それでも、社会はその狂気の上に成り立ってる。

……陽菜の消失を受け入れた世界と、それを破壊した帆高の選択。

どちらが“まとも”かなんて、簡単には言えない。

でも私も……あの選択に……ちょっとだけ、救われた気がした。


フリーレン(空を見上げて)

世界は最初から狂ってる。

だからね――“狂ってる世界”で誰かを守るってことは、

「正しくないこと」を愛せるってことなんだよ。

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