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映画評論  作者: 未世遙輝
7/36

映画 『天気の子』について

フリーレン(淡々と)

――結局、“天気”は戻らなかったんだよね。東京は沈んだまま。それでも、彼らは手を取り合って生きることを選んだ。

それで、いいんじゃないかな。


ひとり(ぽつり)

……私、あのとき、帆高があんなに必死に叫んで……「陽菜!」って……

あの……世界より、たった一人って……

でも、私だったら、そんな……叫べないな……。たぶん、怖くて……。


千里(小さく頷いて)

叫ぶのは簡単じゃない。

叫んだそのあとに、銃口が向いてくるから。

でも彼は、誰かが消される“構造”を、たった一人でぶっ壊した。

……それは、勇気以上に“覚悟”だと思う。


シュタルク(缶詰の匂いをかぎながら)

なあ。

俺、ずっと思ってたんだけど……

“世界”って、そんなに偉いもんなのか?

好きな子一人守れねぇで、誰が正義とか言えるんだよ。

そんなのクソくらえだろ。


フェルン(少しだけ筆を止めて)

でも、もしあなたの選んだ一人が、千人の命と引き換えになるとしたら?

“それでも”って言い切れる?

私は……それが難しいと思う。


フリーレン(穏やかに)

たぶん、千人を救うために、一人を見捨てるのは“大人”の論理。

でも、誰かにとっての“陽菜”は、唯一無二なんだよ。

その重さって、千という数字じゃ測れない。


ひとり(焚き火を見つめながら)

……陽菜さん、自分が消えるって……気づいてたのかな。

わたし……たぶん、気づいてたと思う……。

笑ってたけど、ずっと……こわかったんじゃないかな……。

あれ、演技だったと思う。消えていいって……言いたかったんじゃない。


千里(低く)

わかるよ。

“笑って去る人間”が一番危ない。

引き止めてくれる人がいないと、本当に消える。


シュタルク(うつむいて)

だから、帆高は行ったんだよな。あの雲の上に。

「生きろ」って、命令じゃなくて……一緒に生きよう、って。

あれ、カッコよかった。


フェルン(目を伏せて)

……でも、その後の東京は、ずっと雨。

経済も、生活も、変わって、みんな困って……

“その後”を考えると、あの選択を……やっぱり肯定できない人もいると思う。


フリーレン(遠くを見る)

それでも。

人間って、“いびつな選択”をしながらしか、生きられない。

完璧な答えなんて、存在しない。

だけど、だからこそ、選んだ一人を“全力で守る”価値が生まれる。


ひとり(炎の揺らぎを見ながら)

……消えそうな人を、ちゃんと見て、名前を呼べる人。

それだけで……世界がちょっとだけ、違って見えるって……思いたいな。



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