映画『インビジブル・ゲスト』について③
《場面設定:星の下、静かな夜。旅の途中の野営地にて》
【フェルン】(静かに口を開く)
「映画の中で、ローラが事故車の修理を依頼する相手が……
実は自分たちが殺してしまった青年の両親だったって気づいたとき、
私、背筋が凍りました。言葉にできないほどの怖さ。」
【シュタルク】(驚いて)
「えっ、マジで!? うわ、それ……まるで魔族の巣に人間が間違って入っちゃうみたいな――」
【フリーレン】(遠くを見ながら静かに)
「いや……違う。
これは“偶然”という皮をかぶった、“運命の審判”なんだよ。
ローラは、隠したつもりだった“罪”と、正面から向き合わされることになる。」
【フェルン】(真顔でうなずく)
「両親は、気づいていない。
でも観客は気づいてる。
“その親切な父親が、息子を殺された人物”だって。」
「その優しさが逆に、罪悪感を際立たせる。
“この人たちはこんなに優しいのに、自分はその子を……”って。
ローラ自身の心の中で、地獄が始まってる。」
【シュタルク】(やや震えながら)
「え、なんか……ゾッとするな。
剣も魔法もなしで、ただ日常の中で精神が削られていく感じっていうか……」
【フリーレン】(炎のゆらめきの中で静かに)
「“罪の記憶”ってのは、魔力と似てる。
見えなくても、そこに“確かにある”。
ローラは、両親の家で何もされていない。
でも、すべてを“されてしまっている”ような錯覚に襲われる。」
【フェルン】
「つまり、“優しさ”という無自覚な審判にさらされてるのよね。
父親はただ工具を差し出しただけなのに……
その行為が、ローラの手を焼くような告発になる。」
【シュタルク】(ぼそりと)
「もしかして、あの家に行ったのって、“罰”だったんじゃねぇの……
誰かに裁かれるんじゃなくて、自分の中の“ほんとの声”に叩きのめされるやつ……」
【フリーレン】(静かに)
「そのとおり。
人は、いちばん恐ろしいものからは逃げられない。
それは、“沈黙の中の他者のまなざし”だよ。
両親が気づかないことが、逆にローラを壊していく。」
【フェルン】
「“罪”って、“見逃される”ことで重くなる場合もあるのね……
私は怒鳴られたり責められたりする方が、まだマシだと思った。」
【フリーレン】(目を閉じて)
「それでも人は、忘れようとする。
でも、あの家の沈黙は、彼女に言ったんだよ。
“忘れても、私たちは忘れてない”って。」