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映画評論  作者: 未世遙輝
37/40

映画『インビジブル・ゲスト』について


Scene:山小屋の暖炉の前、3人で『インビジブル・ゲスト』を見終えた直後。


シーン①:あらすじの整理(シュタルクが混乱)


シュタルク

「う、うわぁ……結局さ、誰がウソついてたんだ? えっと、不倫してた女が……殺されたんだよな? てか弁護士の人、誰?」


フェルン

「違います。全員がウソをついています。でも、一番ウソを重ねたのはエイドリアン。

そもそも彼が事故で若者ダニエルを轢き逃げし、それをローラと一緒に隠蔽した。それがすべての始まりです。」


フリーレン

「重要なのは、“見えている真実”がどれも演出されたバージョンだということ。

観客である私たちも、虚構に何度も騙されていた。…まるで、長寿エルフを騙す魔法のようだね。」


シーン②:倒叙ミステリー+ラショーモン構造


フェルン

「この映画はまず“倒叙型”。犯人らしき人物が最初から登場し、

『弁護士』に語る回想の中で真実が明かされるという形式です。」


フリーレン

「そして“ラショーモン構造”。

同じ出来事について、複数の人物が違う解釈・供述をすることで、

“客観的な真実”が見えなくなるという仕掛け。」


シュタルク

「ラショーモン? なにそれ。呪文?」


フェルン(ため息)

「…黒澤明の名作です。同じ事件を、加害者・被害者・証人が全く違う風に語る映画。

この映画も同じ。“何が真実か”ではなく、“誰がどう語るか”で観客が印象を操作されていくんです。」


シーン③:倫理構造と「見ないふり」の罪


フェルン

「ローラは確かに加担した。でも、アドリアンに比べて弱い立場だった。

そのローラを“黙らせる”ために殺す――つまり彼は“2人目の被害者”を出したわけです。」


フリーレン

「そして観客もまた、最初の段階で彼に“同情していた”。

“事故だったから仕方ない”“人生を台無しにするのは酷だ”と。

それはつまり――“現実を直視しない魔法”にかけられていたということ。」


シュタルク

「うっ……なんか、俺も“事故ならしょうがない”って思ってた……。

俺も、魔法にかかってたってことか……?」


フリーレン

「うん。でもそれは、誰にでもあること。

現実の中でも、私たちは都合の悪い真実を見ないふりをする。

この映画は、その“視線の罪”を、観客に問うているんだよ。」


シーン④:ラストの衝撃と、母親の“沈黙の復讐”


フェルン

「すべてを誘導していた“敏腕弁護士グッドマン”は、

実はダニエルの母親だった――これが最大のプロット・ツイスト。

彼女は“法”ではなく“沈黙と演技”で真実を引き出した。」


フリーレン

「人間は、自分の信じたいものしか信じない。

アドリアンも、観客も、それを利用された。

そして母親は、正義を声にせず、静かに遂行した。…まるで、フランメのようにね。」


シュタルク

「うわぁ……俺、何回も“この弁護士いい人だな”って思っちゃってた……。

最後にドア閉められたとき、めちゃくちゃ怖かった。」


シーン⑤:作品の問いかけと、観客への刃


フェルン

「この映画が怖いのは、“殺人の描写”じゃない。

“もし自分が同じ立場だったら、同じように隠すかもしれない”って、思わされるところ。」


フリーレン

「人間は、過去の“罪”ではなく、

“その後どう向き合うか”で、本当の人格が現れる。

そしてそれは――時間をかけても、消えない。」


シュタルク

「うーん……じゃあ俺だったら、最初から警察に言うかな。

たぶん言える……たぶん……。いや……言えるよな……?」


フリーレン(静かに)

「……言えたと思うなら、それは君の強さだよ。」


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