表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
映画評論  作者: 未世遙輝
27/40

映画『ザ・メニュー(The Menu)②

(夜の焚き火のそば。旅の途中。三人は夕食の後、黙って火を見つめている

フリーレン

「タイラーの自殺、見ていて悲しかったよ。

でも、驚きはなかった。……ああ、やっぱり、という感じだった」


フェルン

「彼はスロウィクを“神”のように崇めていました。

でも、その神に“君には資格がない”って言われた。

それは、信じてきた自分自身を否定されることだったと思います」


シュタルク

「でも……死ぬか?そこまでか?

“美味い料理を食える俺はすげえ”って思ってたってだけで……?」


フリーレン

「料理が“アイデンティティ”のすべてだったんだろうね。

食べることで自分の価値を確認して、

語ることで自分の“位置”を作っていた。

でも、“作れ”って言われたとき、彼の虚構は崩れた」


フェルン

「スロウィクの一言でね。

耳元で何を言ったのかは分からないけれど……

たぶん、“君には何もない”って、そんな言葉。

それが致命的だった」


シュタルク

「けどさ。なんか違和感あるんだよな。

俺が下手な料理出しても、“まあ、うまいっちゃうまい”って笑ってくれる人がいたら、それで生きていける気がする。

タイラーには、そういう相手、いなかったのかな」


フリーレン

「いなかったんだろうね。

彼は、ずっと“招かれる側”であろうとし続けた。

“招く側”になるには、たぶん……自分の皿を、誰かに差し出す勇気が要る」


フェルン

「彼は客であることに、逃げ込んでいたんです。

見られる側ではなく、選ぶ側でありたかった。

でも、厨房に立った瞬間、彼は“無力な演者”に変わった。

誰にも拍手されない舞台に、ひとりで立たされた」


シュタルク

「……料理って、怖いんだな。

味だけじゃなくて、“生き方”がバレる」


フェルン

「ええ。

その人の“覚悟”が、皿に全部出るから」


フリーレン

「スロウィクは、それを知ってた。

だからこそ、タイラーに“作らせて”しまった。

それが一番、残酷だったんだよ」


(しばらく沈黙。火のはぜる音だけが響く)


シュタルク

「……俺さ、今度ちゃんと料理、覚えてみようかな。

で、フェルンに“まあまあです”って言われても、立ち直れるくらいにはなりたい」


フェルン

「私はそんな冷たく言ってませんよ……多分」


フリーレン

「“味”って、他人と生きるための魔法みたいなものだよ。

でも、それを間違った呪文にしちゃうと、自分を燃やすことになる。

タイラーの魔法は……完成しなかったね」


(再び静かになる三人。誰も答えを出さないまま、夜は深まっていく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ