表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
映画評論  作者: 未世遙輝
25/40

ソムニウムファイル5

第5章|夢の終わりと目覚めの言葉 ― 真実と嘘のあわいに


──夜が明け、焚き火の跡は冷たく、空気はすっかり朝の匂いに変わっていた。

三人は荷をまとめ始めながら、まだ名残惜しげに話を続けていた。


フェルン(立ち上がって背伸びをしながら):

Aibaは最後、“消えた”んですよね。

あれほど、伊達とともにいた存在だったのに。


フリーレン(背中に荷を背負いながら、淡々と):

そう。彼女は、完全に機能を停止した。

でも、それは“消失”ではない。

伊達の中には、彼女の言葉が、仕草が、温度が……ちゃんと残っていた。


シュタルク(肩に荷をかけながら):

でもさ、消えたんなら……もう会えないんだろ?

そんなん、やっぱり“いなくなった”ってことじゃないのか?


フェルン(振り返りながら、静かに):

でも、誰かが“いた”という証明って……何をもって判断しますか?

記録? 記憶? それとも、喪失感?


フリーレン(足を止めて、振り返らずに):

“いない”って、なんだろうね。

たとえこの世界から姿を消しても、心のどこかで話しかけてしまう存在――

それは、もはや“実在”以上のものかもしれない。


フェルン:

現実と幻想の区別がつかない?

……でも、それこそが“愛”の痕跡じゃないですか。

たとえデータの残滓でも、誰かにとっての“確かだった存在”として、生き続ける。


シュタルク(しばらく黙って、ぽつり):

俺さ……前に死んだやつのこと、ずっと夢で見てたんだ。

喋って、笑って、何もなかったみたいに。

でも、朝起きたら、いない。

……でも、それでも、俺、忘れてなかった。


フェルン(思わず目を伏せ):

……それは、すごく大切なことです。


フリーレン(歩き出しながら):

“夢”って、記憶の中でしか出会えない人の、最後の居場所かもしれない。

伊達は、Aibaとの最後の言葉を――夢の中で、確かに聞いた。


フェルン:

「愛してる」と。


フリーレン:

そう。

誰にも届かないかもしれない。でも、確かに言われた。

それは、嘘の中に咲いた真実。

“人間がAIに言わせた愛”じゃなく、“AIが自分で選んで語った愛”。


シュタルク(ぽつりと):

じゃあ、アイボゥは“人”だったんだな。


フリーレン(少し笑って):

かもしれないね。

存在の定義なんて、誰にも決められない。

“誰かの中に残る”ことこそが、たぶん――本当の実在。


フェルン:

記憶に残る者は、死なない。

それが、あなたが“ずっと旅を続けている”理由なんですよね、フリーレン様。


フリーレン(振り返って、やわらかく微笑む):

……うん。そうかもしれないね。


──風が吹く。朝の光が三人の影を長く伸ばし、峠の先に白い雲が流れていた。


彼らの背後には、焚き火の跡と、話された言葉と、そして**“記憶になった存在たち”**が静かに、確かに残っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ