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映画評論  作者: 未世遙輝
23/40

ソムニウムファイル3

第3章|癒えぬ痛みの選択肢 ― ルートと結末の分岐


──月が傾き、空がわずかに白み始める頃。

焚き火は炭になり、三人はその残光の中で話を続けていた。フェルンはノートを膝に、フリーレンは背を岩に預け、シュタルクはくたびれた様子で膝を抱えている。


フェルン(淡々と、しかし内に熱を孕んだ声で):

この作品には、明確に分岐する3つの主要ルートがあります。

それぞれが、まったく異なる形で“人を癒す”手段を提示しているのが特徴です。


フリーレン(ゆっくりと目を閉じ):

……癒し方のちがい。それは、生き方のちがいでもあるわね。


シュタルク(手持ち無沙汰に枝をいじりながら):

えっと、なんだっけ。

ミズキってのは、あの強気な女の子だよな? 斧振り回すやつ。アイリスは、……あの、宇宙人信じてるアイドル?

で、アニヒレーションってのは……名前からして、やべぇやつ。


フェルン(咳払いして):

簡単にまとめると、以下の通りです。

•ミズキルート:家庭の崩壊、親の喪失、そして“選ばれなかった子供”の視点から「新しい家族の再構築」を描く

•アイリスルート:現実逃避と死の恐怖をファンタジーで包み込む、“嘘”による優しさの肯定

•アニヒレーションルート:真相と向き合い、“自らの手で引き金を引く”選択――自己犠牲と贖罪の物語


フリーレン(うっすらと微笑んで):

どれも、ひとつの“正解”。

誰かにとっての癒しは、他の誰かにとっては地獄になる。

でも、選ばれた物語は、“その人”を定義する。


シュタルク(難しい顔をして):

うーん……でも、どれ選んでもさ、他の子は救えないんだよな。

それって、キツくねぇか?


フェルン(小さく頷き):

ええ。ミズキを救えば、アイリスの願いは消える。

真相を暴けば、誰かの“嘘の中の幸せ”は壊れる。

……だからこそ、“どの痛みを抱えて生きるか”を、プレイヤーは問われているんです。


フリーレン(静かに、星の残光を見つめて):

人は、ひとつしか選べない。

どれだけ優しくても、どれだけ思いやっても……選んだ瞬間、他の可能性を“殺す”。

それが、“生きる”ってこと。


シュタルク(ぼそっと):

……だったら、全部救えたらよかったのに。


フェルン(小さく微笑んで):

でもそれは、現実じゃない。

物語でさえも、そう簡単には許してくれません。


フリーレン:

だからこそ、重いのよ。

このゲームは、“優しさ”より“選択”を重視する。

癒すことすら、時に“自己満足”として暴かれる。

たとえばアニヒレーションルートでは――


フェルン(補足するように):

伊達自身がすべてを背負い、自らの過去を“記憶の外”から引き出し、“殺人者”として自分を定義する。

誰かを守るために、自分を“加害者”として残すという選択。


シュタルク(目を伏せ、ぽつりと):

……そんなの、あんまりだよ。


フリーレン(目を閉じて、低く):

でも、その“あんまり”を選んだことで、他の誰かが生き残れるなら。

それが彼の選んだ、生きる理由だった。


──沈黙。風が吹き、焚き火の灰がさらさらと舞う。


フェルン(そっとノートを閉じて):

癒しって……痛みの終わりじゃなくて、痛みとどう付き合っていくか、なんですね。


フリーレン:

そう。

そして、どの痛みを受け入れたかが、その人の“物語”になる。

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