ソムニウムファイル3
第3章|癒えぬ痛みの選択肢 ― ルートと結末の分岐
──月が傾き、空がわずかに白み始める頃。
焚き火は炭になり、三人はその残光の中で話を続けていた。フェルンはノートを膝に、フリーレンは背を岩に預け、シュタルクはくたびれた様子で膝を抱えている。
フェルン(淡々と、しかし内に熱を孕んだ声で):
この作品には、明確に分岐する3つの主要ルートがあります。
それぞれが、まったく異なる形で“人を癒す”手段を提示しているのが特徴です。
フリーレン(ゆっくりと目を閉じ):
……癒し方のちがい。それは、生き方のちがいでもあるわね。
シュタルク(手持ち無沙汰に枝をいじりながら):
えっと、なんだっけ。
ミズキってのは、あの強気な女の子だよな? 斧振り回すやつ。アイリスは、……あの、宇宙人信じてるアイドル?
で、アニヒレーションってのは……名前からして、やべぇやつ。
フェルン(咳払いして):
簡単にまとめると、以下の通りです。
•ミズキルート:家庭の崩壊、親の喪失、そして“選ばれなかった子供”の視点から「新しい家族の再構築」を描く
•アイリスルート:現実逃避と死の恐怖をファンタジーで包み込む、“嘘”による優しさの肯定
•アニヒレーションルート:真相と向き合い、“自らの手で引き金を引く”選択――自己犠牲と贖罪の物語
フリーレン(うっすらと微笑んで):
どれも、ひとつの“正解”。
誰かにとっての癒しは、他の誰かにとっては地獄になる。
でも、選ばれた物語は、“その人”を定義する。
シュタルク(難しい顔をして):
うーん……でも、どれ選んでもさ、他の子は救えないんだよな。
それって、キツくねぇか?
フェルン(小さく頷き):
ええ。ミズキを救えば、アイリスの願いは消える。
真相を暴けば、誰かの“嘘の中の幸せ”は壊れる。
……だからこそ、“どの痛みを抱えて生きるか”を、プレイヤーは問われているんです。
フリーレン(静かに、星の残光を見つめて):
人は、ひとつしか選べない。
どれだけ優しくても、どれだけ思いやっても……選んだ瞬間、他の可能性を“殺す”。
それが、“生きる”ってこと。
シュタルク(ぼそっと):
……だったら、全部救えたらよかったのに。
フェルン(小さく微笑んで):
でもそれは、現実じゃない。
物語でさえも、そう簡単には許してくれません。
フリーレン:
だからこそ、重いのよ。
このゲームは、“優しさ”より“選択”を重視する。
癒すことすら、時に“自己満足”として暴かれる。
たとえばアニヒレーションルートでは――
フェルン(補足するように):
伊達自身がすべてを背負い、自らの過去を“記憶の外”から引き出し、“殺人者”として自分を定義する。
誰かを守るために、自分を“加害者”として残すという選択。
シュタルク(目を伏せ、ぽつりと):
……そんなの、あんまりだよ。
フリーレン(目を閉じて、低く):
でも、その“あんまり”を選んだことで、他の誰かが生き残れるなら。
それが彼の選んだ、生きる理由だった。
──沈黙。風が吹き、焚き火の灰がさらさらと舞う。
フェルン(そっとノートを閉じて):
癒しって……痛みの終わりじゃなくて、痛みとどう付き合っていくか、なんですね。
フリーレン:
そう。
そして、どの痛みを受け入れたかが、その人の“物語”になる。