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映画評論  作者: 未世遙輝
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ソムニウムファイル1

第1章|眠りの中の扉 ― ソムニウムとは何か


──夜。山の尾根道を越えた先、星のよく見える高台。三人は、旅の途中で一夜の野営をしていた。

シュタルクが焚き火の番をしながら、魚を焼いている。フリーレンは薄い布に包まれた本を広げ、フェルンは魔法道具の記録をまとめていた。


シュタルク(魚をひっくり返しながら):

なあ……フリーレン。

“ソムニウムファイル”って、あれ結局なんだったんだ? 夢に入って事件を解くって、俺にはよく分かんなかったけど。


フェルン(眉をひそめながら):

“ソムニウム”は、ラテン語で「夢」。

つまり、被疑者の“無意識下の深層記憶”に、伊達という捜査官がAI義眼を使って侵入し、その人間の真相に迫るという捜査法です。

……正直、倫理的にはかなりグレーですけど。


フリーレン(目線を落としたまま、焚き火の揺らぎに影を落とす):

夢の中では、記憶も感情も混ざり合う。

現実の出来事が歪められ、象徴となって現れる。たとえば、母親が“巨大な像”として立ちはだかったり、罪悪感が“崩れ落ちる街”として表現されたり。


フェルン(軽くため息をついて):

それ、どうやって真実として判断するんですか?

夢は自由すぎて、根拠も整合性もなくなる。証拠主義の捜査とは逆行しています。


シュタルク(焼けた魚を皿に移しつつ):

でも……なんか分かる気もする。

だって、言葉にできないことってあるじゃん。俺だってたまに、誰にも言えないことを夢で見ちまうことあるし。


フェルン(少し意外そうに):

……シュタルクさんにも、そんな繊細な一面が?


シュタルク(口にくわえた魚をもぐもぐしながら):

お、おう……なんか嫌な言い方だな。


フリーレン(ふっと笑い):

でも、夢は“嘘をつかない”。

正確に言うと……夢は“本当のことを、嘘の形で見せる”。

それは古代魔族の幻術にも似ている。記憶を直接視覚化するという点では、むしろ精霊魔法に近い。


フェルン(真剣な表情でノートに書きつけながら):

なら、夢の中で人が逃げているもの、それこそが“罪”や“後悔”といった、未解決の情動なのかもしれませんね。


フリーレン(頷く):

そう。

伊達鍵は、それを追う捜査官。そして、彼の相棒であるAibaは、夢の中で“論理”を失い、“象徴”を読み解こうとする。

そこに、人間の心の複雑さが浮き彫りになる。


シュタルク(火を見つめながら、ぽつり):

……でもさ、夢の中で誰かを助けられても、現実じゃ何も変わらないんじゃないのか?

そんなの、ただの幻じゃん。


フェルン(柔らかく、しかし真面目な声で):

幻でも……その人が“向き合えなかった真実”に触れられるなら、それはきっと意味がある。

嘘を経由しないと、人は本音に辿りつけないこともあるんです。


フリーレン(星を見上げて、ゆっくりと):

そう。

“夢の中の真実”は、曖昧で、壊れやすくて、でも確かに存在する。

それを信じることが、この物語の第一歩になるのよ。


──風が一瞬、焚き火を揺らす。

木の葉がふるりと音を立て、空の彼方で星が一つ、流れ落ちていった。


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