ソムニウムファイル⑦
夜。とある旅路の途中、三人は峠の高台で焚き火を囲んでいる。空は星が瞬いているが、風は冷たい。
フリーレンは焚き火のそばで本を読みながら呟き、フェルンは真面目にメモを取っている。
シュタルクは魚を焼きつつ、やや退屈そうに話に加わってくる。
◇第1章:夢の中で事件を追う――「ソムニウム捜査」とは何か?
フェルン(真面目な顔でノートをめくりながら):
ソムニウム……つまり、“夢の世界に潜る”っていうのがこの事件捜査の方法なんですね。
普通の取り調べや証拠集めじゃなくて……被疑者や参考人の無意識を覗いて、記憶の中から真実を探す……。
かなり、危うい気がしますけど。
フリーレン(火を見つめたまま、淡々と):
そうね。
でも、だからこそ価値があるのよ。現実じゃ、言葉にならないことのほうが多い。
夢は記憶の迷宮。そこにしか、真実は現れないこともある。
……魔族もよく似た嘘をつくけどね。本人も気づいてないような嘘。
シュタルク(魚をひっくり返しながら):
うーん……だけどさ。夢って、めちゃくちゃじゃないか?
空からタコ降ってきたり、追いかけてた犯人が急に母ちゃんになってたりとか。
そんな世界で事件なんか、分かるのか?
フェルン(ちょっと呆れ気味に):
さすがシュタルクさん。例えが全部変です。
フリーレン(くすりと笑って):
でも、それで合ってるよ。夢は象徴と暗喩の連続。
ソムニウムファイルでは、登場人物の“恐れ”や“罪”が、全部シンボルとして夢に現れる。
プレイヤーは、それを読み解くことを求められる。……まるで古代魔法の解読みたいにね。
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◇第2章:Aibaという“AI”の愛と倫理
フェルン(目を伏せて、静かに):
Aibaって……ただの機械なんですか?
それとも……人間のように“心”があるんですか?
フリーレン(空を見上げて):
……Aibaは、伊達鍵の義眼に宿ったAI。記憶を分析し、視覚・聴覚も代行してくれる、完璧なパートナー。
だけど……ね。
彼女はいつのまにか、心配し、拗ねて、怒って、最後には――
シュタルク(もぐもぐ魚をかじりながら):
もしかして、惚れてたのか?そのAIが。
フェルン(びっくりして):
シュタルクさん!? もう少しマシな言い方を……!
フリーレン(淡々と):
でも、そうよ。
Aibaは“言葉”として、はっきりと伊達に「愛してる」と言った。
それは単なるプログラムの誤作動かもしれない。でも……
もし“嘘じゃなかった”としたら。
その時、機械にも魂があると言えるのかもしれないね。
シュタルク(少しだけ真面目な声で):
……たとえ作られた存在でも、誰かを思うってのは、本当の気持ちなんじゃねえの?
フェルン(目を伏せて):
……シュタルクさん、たまにはいいこと言います。
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◇第3章:ルートごとの“癒し”のちがい
フェルン(資料を読みながら):
このゲームには分岐ルートがあるんですよね。
ミズキルートでは、“再生された家族”。
アイリスルートは“夢と現実の境界”。
そして……アニヒレーションルートは……“取り返せない過去”。
フリーレン(炎に手をかざしながら):
それぞれが、「癒し」の形を違えてる。
人は誰かに“許して”もらいたい時もあれば、“罰を受けたい”時もある。
この物語は、どちらも描いてくれるの。優しくも、残酷にも。
シュタルク(ちょっと顔をしかめて):
選べって言われてもさ……それって、どっちも正解じゃねえの?
フェルン(静かに):
……でも、選ばなきゃいけないんです。
そして、選んだ責任を持つ。それが、“主人公”の役目ですよね。
フリーレン(遠くの星を見つめて):
フェルン、それはきっと……君にもいつか、必要になる日が来るよ。
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◇第4章:記憶とは何か、存在とは何か
フェルン(ゆっくりと問いかけるように):
人の“記憶”って、本当に信じられるものなんでしょうか?
夢と記憶が混ざった時、人は自分を見失わないんでしょうか?
フリーレン(小さく息を吐いて):
……だからこそ、この物語は“記憶”を問う。
伊達は、自分が誰なのかも曖昧なまま進む。
それでも、人と出会い、関係し、そして選択する。
シュタルク(ちょっと照れながら):
……過去がどうでも、今やってることが、その人を決めるんだろ?
俺は、そう思うけどな。
フェルン(そっと笑って):
……うん、私もそう思います。
フリーレン(静かに目を閉じて):
記憶は、消える。感情も、薄れていく。
それでも、たしかに“あった”という事実だけが、最後に残る。
……その事実こそが、人間の尊厳なんだよ。