ソムニウムファイル①
場所:深夜のファミレス。雨音が窓を叩く。ドリンクバー前の円卓に5人が集う。
千束(ポテトを頬張りながら)
「さてさてー!今日は例の“ソムニウムファイル”の会!みんなー、目ぇ覚めてる〜?アイボゥ、可愛くない?ああいう義眼AI、うちの職場にもほしー!」
リョウ(目を閉じたまま静かに)
「……AIに魂は宿ると思う?」
ぼっち(ガタッ)
「っっ……!あ、あの、AIに……し、視線……えっと、常に、監視されるとか、む、無理……ですよぉぉ……っ(机の下に顔)」
夏美(笑いながら手元のノートを開き)
「まあまあ、まずは落ち着こうか。
今日のテーマは“義眼型AI・アイボゥ”と伊達との関係性。啓介さん、ちょっと導入お願い。」
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◆ テーマ①:Aiba=他者としてのテクノロジー
啓介(低く理知的に)
「Aibaは単なる捜査ツールではない。彼女は“視覚装置”であり、“人格”を持つ。しかも、伊達の義眼の中に常駐して、四六時中彼を“見ている”。」
リョウ(冷たく)
「つまり、最も信頼できる相棒が、同時に最も深く“監視”してくる存在、という構造か。」
ぼっち(震え声)
「え、えっと……“友達”が……常にこっちを見てるって、あ、それって、わ、私、もう、胃がっ……うぷっ……」
千束(ぼっちの背中をポンポンしながら)
「まあまあまあ。私的にはAibaちゃんって、“義体萌え”の正統進化版って感じ!見た目ちっちゃくてキュートだけど、めちゃ強いし有能。最高かよ!」
啓介
「いや、そこが重要でね。
Aibaは“見る”機能を通して、人間の“記憶”や“感情”に接続してくる。
つまり、彼女は“他者性を内面化したテクノロジー”なんだ。」
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◆ テーマ②:記憶の外部化=“記録する他者”
夏美
「アイボゥって、伊達の忘れた記憶を補完してるのよね?
記録して、再提示してくる。つまり“あなたは以前こう言ってた”って、外から言ってくる相棒。」
リョウ(冷静に)
「ラカン的に言えば、“他者A”=構造としての観察者。
伊達は、自分の記憶を“自分以外の存在”に預けてしまった。もはや自我が内から出てこない。」
ぼっち(机に突っ伏しながら)
「で、でも、あの、他人に全部覚えられてて、後から“君、そうだったよね”って言われるの……し、死ぬほど恥ずかしい……」
千束(大笑い)
「うん、ぼっちちゃん、それ私でもつらいわー。ログ、削除してぇぇ!!って叫びそう!」
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◆ テーマ③:Aibaの“視線”と倫理性
啓介
「重要なのは、Aibaの“見る”は数値処理であり、意味を持たない。
彼女は画像認識・脈拍・行動予測はできても、“情動としての共感”は演算されて出力される。
これはフッサール的な現象学と真逆なんだ。」
リョウ
「彼女の視線は“現象世界に触れない”。観測はしても、体験はしない。」
夏美(静かに)
「でも、伊達はそんなAibaと会話して、笑って、時に怒る。
つまり、感情を向けてる。“人間”として認識してる。」
ぼっち(ボソッと)
「……まるで、う、うちのギターみたい……喋らないけど、私のこと見ててくれる……あっ、い、今の例え、気持ち悪かったですか!? すみませんっっ!!」
千束(目を輝かせながら)
「いやむしろ、最高に“ぼっち節”だった!!好きっ!」