映画 グレイテスト・ショーマン②
【場面:早朝の劇場、舞台照明が切れた静寂の中。前夜の上演を反芻するように語り合う】
◆千束(舞台上に腰をおろして)
「ねぇ、チャリティがさ、ジェニーの歌の途中で、舞台袖のバーナム見つめてるシーン……あそこ、セリフ何もないのに、全部わかっちゃうよね。あれ、ほんとに痛かった……“あ、この人、今、私じゃないものに夢中なんだな”っていう……」
◆フェルン(表情を変えずに頷く)
「彼女の瞳は、嫉妬じゃない。“喪失”の視線。……それでも立ち去らない。それが、彼女の強さ。彼女にとってバーナムは“支えるべき人”だったけれど、あの瞬間だけは、“見失った人”になっていた。」
◆ひとり(涙ぐみながら)
「……私、あそこ、すごく怖かった……だって、“愛してる”のに、“何も言わずに見てる”しかできないって……。まるで、自分が“選ばれてない”みたいで……でも、チャリティさんは、ずっと綺麗だった……」
◆フリーレン(舞台の幕を見つめながら)
「言葉ではなく、“姿勢”で愛を語る人。……それがチャリティ。彼女の愛は、所有じゃなく“信頼”だった。でもその信頼が崩れた時、彼女は黙って距離を置いた。……それもまた、誇りだった。」
◆シュタルク(ぽつりと)
「俺、ああいうの苦手だ……。なんか、言ってほしいじゃん。“あなたが間違ってる”って。でもチャリティは何も言わなかった。……だから余計に、重いよな。“全部わかってる”って顔して……耐えてるって、すげえよ……」
◆千束(軽く手を打ちながら)
「でもさ、最後の“象のシーン”! バーナムがステージから離れて、象に乗って帰るあのシーン! あれ、最高にロマンチックじゃなかった? もう、“見つけた場所に帰る”っていうかさ、“幻を見たあと、現実を愛する”っていうか……」
◆フェルン(やや目を伏せて)
「バーナムが見た夢はジェニーだった。けれど、“夢は舞台の中だけでいい”と気づいた時、彼は“帰るべき場所”を思い出した。……チャリティは、現実に根を張る“生の拠点”。夢が崩れた後の“再生”の象徴です。」
◆フリーレン(深く静かに)
「チャリティは、“赦し”によって物語を閉じる存在。バーナムに“戻る場所”を用意したのは、彼女だった。……彼の成功も、彼の失敗も、最終的に“受け入れる”という愛の形は、まるで時を超えて待ち続ける者のよう。」
◆ひとり(そっと微笑みながら)
「……あの時、バーナムが“夢の人”じゃなくて、“自分を待ってた人”のほうに気づけたのが……すごく、嬉しかったです……」